一般社団法人日本肝臓学会によると、B型肝炎は世界で約3億5,000万人、日本では約130万~150万人が感染しているといわれています。
このことから、「自身もB型肝炎に感染しているのではないか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
そのほかにも以下の疑問を持つ方もいるでしょう。
- 「B型肝炎の予防接種に間に合うだろうか?」
- 「B型肝炎の給付金はいつまで?」
そこで、本記事ではB型肝炎の「予防接種期間・潜伏期間・検査期間・請求期間」について解説します。
目次
B型肝炎のワクチン予防接種期間
B型肝炎の予防接種を受ける期間は生後1歳までで、合計3回おこないます。
具体的な予防接種のスケジュールについては、通常接種の場合と母親が感染している場合の接種では若干スケジュールが異なりますので、以下の表を参考にしてください。
定期接種 | 1回目:生後2カ月 2回目:生後3カ月 3回目:生後7カ月~8カ月 |
母親がB型肝炎に感染している場合 | 1回目:出生直後 2回目:生後1カ月 3回目:生後6カ月 |
もし上記のスケジュールで予防接種ができなかった場合には、以下のとおりに対応してください。
1回目と2回目の間隔が4週を超えた | 気づいた時点で速やかに2回目を接種 |
1回目と2回目の間隔が4週未満 | 引き続き3回目を接種 |
2回目と3回目を規定より長い間隔で接種 | 引き続き3回目を接種 |
2回目と3回目を規定より短い間隔で接種 | 3回目接種1カ月~2カ月を目途にHBs抗体価を測定しておく |
また、大人(成人)におけるB型肝炎ワクチン接種は「初回・1か月後・6か月後」の3回接種が基本です。
B型肝炎ワクチンの抗体持続期間
B型肝炎ワクチンを3回接種した場合、感染防御効果は20年以上、抗体獲得率は40歳までの接種で95%といわれています。
一度でも正しく予防接種を受けていれば、ほとんどのケースで感染を防げます。
B型肝炎の潜伏期間
B型肝炎のワクチンを打っていない場合で感染者とのスキンシップがあった際、「B型肝炎に感染してしまったのではないか?」と不安に感じるかと思います。
しかし、B型肝炎に感染したからといって、すぐに症状が出たり、検査で感染が明らかになったりするわけではありません。
なぜなら、B型肝炎には、潜伏期間があるからです。
以下で、潜伏期間中に検査をおこなう注意点や、潜伏期間の目安について解説します。
B型肝炎の潜伏期間に血液検査はできる?
「B型肝炎に感染してしまったかもしれない」と不安に感じても、すぐに検査は受けないようにしてください。
なぜなら、感染後、30日~60日後でなければウイルスが検出されないからです。
たとえば感染者と性行為をした場合であれば、その日から数えて30日~60日を目安に検査をおこなってください。
また、症状が出るまでの潜伏期間については、人によって大きく異なります。
1カ月程度の場合もあれば、数十年経過してから症状が出る場合もあります。
潜伏期間後に発症するケースもある
「B型肝炎の感染機会があったにも関わらず症状が出ない場合」でも、必ず一度は検査を受けてください。
なぜなら、潜伏期間が長いだけの可能性があるからです。
B型肝炎ウイルスは、感染してすぐに症状が出るわけではありません。
特に症状が出ないケースもありますし、数十年後に症状が出るケースもあります。
潜伏していると知らずに生活してしまうと、多くの人に感染させてしまう恐れがありますので、必ず検査を受けておきましょう。
B型肝炎の初期症状
B型肝炎の潜伏期間を経たあとは、以下のような症状が起きます。
- 全身の倦怠感
- 吐き気
- 食欲不振
- 発熱
- 皮膚や眼球の黄疸(おうだん)
上記を発症したら、B型肝炎を疑ってください。
B型肝炎の一過性の期間
B型肝炎を発症しても、「治らないのではないか?」と心配する必要はありません。
なぜなら、多くの場合は一過性感染で終わるからです。
一過性感染であれば、大体1カ月ほどで完治するケースがほとんどです。
抗体も作られるので、再度感染する心配もありません。
また、一過性感染者の多くは、自覚症状がなくそのまま治癒します。
しかし、B型肝炎には、一過性のほかに「持続感染」や「セロコンバージョン」もあります。
持続感染とは?
B型肝炎には、感染したウイルスが排除されない「持続感染」があります
肝臓に半年以上にわたってウイルスがすみつき、一部の方は慢性肝炎を発症します。
ただし、慢性肝炎になるのは、持続感染者のうち、約10%といわれています。
セロコンバージョンとは?
B型肝炎のなかで注意しておきたいのが、セロコンバージョンです。
なぜ注意すべきなのかというと、セロコンバージョンを「治癒」と勘違いしてしまいやすいからです。
セロコンバージョンは、一時的にB型肝炎ウイルスの活動を抑え込んで、症状を鎮静化させます。
しかし、実際には治癒したわけではありません。
セロコンバージョンのうちにウイルスが増殖を続けて、肝炎が進行するケースもあります。
B型肝炎を検査できる期間は?
B型肝炎の検査ができる期間は、検査方法によって異なります。
主におこなわれる2種類の検査の期間は、以下のとおりです。
- B型肝炎即日検査:感染機会からおよそ60日以上経過後
- HBV-NAT検査:感染機会からおよそ35日以上経過後
検査方法の特徴については、以下でより具体的に解説します。
B型肝炎即日検査(HBs抗原検査)
B型肝炎即日検査は、感染機会からおよそ60日以上を経過してから検査してください。
60日以上経過していないと、ウイルスが検出されない可能性があります。
60日以上経過していれば、HBs抗原という、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するタンパク質が血液中にあるかどうかを調べられます。
検査方法は血液検査となり、大体15分~30分ほどで結果が判明します。
HBV-NAT検査(HBV-DNA定量検査)
HBV-NAT検査は、感染機会からおよそ35日以上経過してから検査できます。
血液中にウイルスが存在していた場合には、ウイルス遺伝子を構成するDNAを増幅して検出できます。
検査方法は、B型肝炎即日検査と同様の血液検査です。
B型肝炎と異なるのは、結果判明までの時間です。
B型肝炎即日検査は当日に結果が判明するのに対して、HBV-NAT検査は結果判明まで4日~5日かかります。
検査可能期間 | 検査方法 | 結果判明までの期間 | |
B型肝炎即日検査 | 感染機会からおよそ60日以上経過後 | 血液検査 | 当日 |
HBV-NAT検査 | 感染機会からおよそ35日以上経過後 | 血液検査 | 4日~5日 |
B型肝炎訴訟の請求期間はいつまで?
B型肝炎給付金の訴訟・給付を受けられる期間は、2027年3月31日までです。
B型肝炎給付金の訴求期間は、元々は2022年1月12日までとされていましたが、現在は法改正によって2027年3月31日まで延長されています。
今後も延長される可能性はありますが、給付金を受け取るには、できるだけ早い段階で対応をしてください。
B型肝炎給付金の請求期間が延長された理由
B型肝炎給付金の期間は、2回に渡って期間が延長されています。
理由は、政府が見込んだ提訴者数に及ばなかったためです。
元々の請求期限は、2017年1月12日までとされていました。
しかし、2016年5月時点で提訴者数が遠く及ばなかったことから、5年の延長がされます。
さらに、見込んでいた救済対象者数に及ばなかったために、2027年3月31日までに、再度延長されたのです。
B型肝炎給付金の額
B型肝炎給付金で受け取れる額は、50万円~3,600万円です。
給付金額の幅が広いのは、症状によって異なるからです。
症状別の給付金額は、以下の表にまとめました。
死亡・肝がん・肝硬変の場合 | ・発症後20年が経過していない場合:3,600万円 ・発症後20年が経過している場合:900万円 |
肝硬変(軽度)の場合 | ・発症後20年が経過していない場合:2,500万円 ・発症後20年が経過していて治療を受けている場合:600万円 ・発症後20年が経過していて上記以外の場合:300万円 |
慢性肝炎の場合 | ・発症後20年が経過していない場合:1,250万円 ・発症後20年が経過していて治療を受けている場合:300万円 ・発症後20年が経過していて上記以外の場合:150万円 |
無症候性キャリアの場合 | ・発症後20年が経過していない場合:600万円 ・発症後20年が経過している場合:50万円 |
上記のほか、訴訟手当金と検査費用も受け取れます。
B型肝炎訴訟の請求は期間に限らず早めにおこなうべき
B型肝炎訴訟をおこなうなら、早い段階で進めてください。
早く手続きを進めないと期間内に間に合わなくなったり、給付金額が減ってしまったりする可能性があるからです。
上記のリスクが起きる理由について、以下で具体的に解説します。
準備や手続きに時間がかかる
B型肝炎訴訟をおこなうには、準備や手続きに多くの時間がかかります。
時間がかかる要因として、以下の3つが考えられます。
- 血液検査のために病院に行かなければならない
- 家族の検査をする場合に、時間を合わせなければならない
- 血液検査結果が必要になる家族が亡くなっている場合は、死亡診断書を取得して医療機関を調査しなければならない
自身が検査を受けるのであればスムーズですが、家族を巻き込む場合にはかなりの手間と時間がかかります。
これらのことも見越したうえで、準備を進めていかなければなりません。
診療録の保管義務は5年まで
B型肝炎給付金は、発症から20年経過しても受け取れます。
しかし、実際に20年経過している場合に給付金を受け取るのはとても困難です。
なぜなら、診療録(カルテ)の保管義務は5年とされているからです。
第二十四条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。
医師法 | e-Gov
反対をいえば、5年が経過すると破棄されてしまう可能性があります。
診療録(カルテ)が破棄されてしまうと、カルテ以外に証明できる資料がない場合の訴訟が難しくなります。
ですから、過去に発症した経験があるならば、破棄されてしまう前に診療録(カルテ)を手に入れておかなければなりません。
受け取れる給付金額が減る可能性がある
B型肝炎給付金をできるだけ多く受け取るのであれば、発症から20年以内に請求をおこないましょう。
なぜなら、発症してから20年以上経過すると給付金の額が大幅に減ってしまうからです。
たとえば、死亡・肝がん・肝硬変の場合であれば、20年以内であれば3,600万円、20年経過後であれば900万円と、2,700万円もの差があります。
親の血液検査結果が入手困難となる可能性がある
親の血液検査をおこなうためにも、できるだけ早い段階で準備をすすめてください。
親の血液検査が必要な理由は、一次感染者の場合、B型肝炎給付金を受け取る要件の一つに「母子感染でないこと」があるからです。
母子感染でないことを証明するには、母親の血液検査の結果が必要になります。
しかし、母親が高齢であったり亡くなっていたりする場合には、照明が難しいです。
ですから、母親が元気なうちに血液検査を受けてもらいましょう。
経済的な心配なく治療をおこなうため
B型肝炎の治療をおこなうためにも、早い段階で訴訟をおこないましょう。
訴訟を起こさないで給付金を受け取らなかった場合は、自己負担で検査をしなければなりません。
しかし、経済的な理由により、自己負担での治療が難しいケースもあるでしょう。
訴訟をおこなって給付金を受け取っておけば、その費用で治療をおこなえます。
さいごに|B型肝炎は早い段階の行動が大切
B型肝炎は、感染前・感染後・発症後、いずれにおいても早い段階の行動が大切です。
感染前 | ワクチンをしっかり打っておくことで感染リスクを大幅に下げられる |
感染後 | 感染機会から目安の期間をもとに検査をおこなえば、早期段階で感染が判明し、周囲に感染させるリスクを下げられる |
発症後 | 早い段階で訴訟を起こした方が受け取れる給付金の額が多い |
上記のように、早く適切な行動をすることは、いずれにおいてもメリットに働きます。
ただし、訴訟をご自身だけで進めるのはとても困難です。
効率よくスムーズに進めるために、弁護士への相談もご検討ください。