B型肝炎ウイルスの感染者は、訴訟手続きによって国から給付金を受け取れます。

しかし次のような疑問がある方は、実際に手続きを始めようとしてもなかなか行動できないでしょう。

  • B型肝炎訴訟で給付金を受け取るまでの流れは?
  • どのような手続きが必要なの?手続きにかかる期間は?
  • 弁護士に依頼した場合の費用や流れは?

本記事では、B型肝炎訴訟の流れや解決までの目安となる期間、弁護士に依頼する場合のメリットや費用などを解説していきます。

B型肝炎訴訟の手続きを検討している方はぜひ参考にしてください。

B型肝炎なら弁護士に無料で相談
この記事を監修した医師
福地 裕三(にじいろクリニック新橋)
にじいろクリニック新橋の院長の福地です。性感染症を中心にED、AGA、ピルなどの処方も行う自由診療のクリニックになります。患者様1人1人、必要な検査は異なりますしエビデンスのある治療を行う必要があります。正しい情報を提供するとともに解決策を見つけ出してご提案いたします。

B型肝炎訴訟の具体的な流れ・期間

B型肝炎訴訟で給付金を受け取るには、次の流れに沿って手続きを進める必要があります。

  • 裁判所に提出する書類の作成
  • 訴訟手続き
  • 給付金の支払い手続き

各手続きは相応の時間がかかるので、手続きを始めてから給付金を受け取るまでに、順調に進んだとしても1年半から2年程度かかります。

以下で各手続きの具体的な内容を解説していきますので、あらかじめ確認しておきましょう。

裁判所に提出する書類の作成|約3か月

B型肝炎の給付金の支給を受けるには、集団予防接種における注射器の連続使用による一次感染者もしくは、一次感染者からの母子感染者(二次感染者)であることを証明しなければなりません。

給付金の受給要件を証明するには、母子健康手帳、予防接種台帳、カルテなど多くの資料が必要です。

厚生労働省は、「B型肝炎訴訟の手引き」を発行し、証拠資料の具体的内容を解説していますが、手引きを読んでも自分で全ての資料を集めるのは難しいでしょう。

そのため、B型肝炎訴訟をおこなう際は、弁護士に依頼する方が多いです。

弁護士に依頼する場合、裁判所に提出する訴状や証拠資料は、弁護士が集めてくれます。

弁護士が裁判所に提出する書類を作成するまでにかかる期間の目安は、3か月程度です。

自分で資料を集める場合や、母親が亡くなっている場合などは、より多くの時間がかかる可能性もあるでしょう。

参考:B型肝炎訴訟の手引き|厚生労働省

訴訟手続き|約1年

訴状と証拠資料の準備ができたら、裁判所に訴訟を提起します。

B型肝炎訴訟では、基本的には通常の審理はおこなわれずに、国との和解協議がおこなわれます。

通常の訴訟では、原告と被告の主張のどちらが正しいのかを証拠によって判断することになりますが、B型肝炎訴訟では、給付金の支給を受けるための証拠資料が揃っているかという点のみが焦点となります。

和解協議では、国による証拠資料の確認作業がおこなわれますが、確認作業には、訴訟提起から1年ほどかかるケースが多いです。

証拠資料が不足している場合には、追加資料の提出が必要となったり、請求そのものが認められなくなったりする可能性もあります。

追加資料が必要となるケースでは、和解までにかかる期間はさらに延びることになるでしょう。

給付金の支払い手続き|約2か月

訴訟での和解が成立しても、給付金をすぐに受け取れるわけではありません。

給付金を受け取るには、裁判所での和解が成立したことを証明する和解調書を社会保険診療報酬支払基金に提出する必要があります。

和解の成立から、給付金を受け取るまでには約2か月かかります。

裁判所から和解調書の発行を受けるまでに2週間ほど、和解調書の提出から支払いまでに1か月半ほどが期間の目安です。

B型肝炎訴訟の現状

現在、B型肝炎の給付金は、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」に基づいて支払いがおこなわれています。

請求期限については、延長が繰り返されており、現在のところは令和9年3月31日が請求期限です。

給付金を受け取れる可能性のある方は、早めに手続きを進めるようにしてください。

B型肝炎訴訟を提起した原告は、令和5年1月31日現在で約11万人にも上っています。

そのうち、和解が成立しているのは約8万5000人で、現在も手続き中の方が多くいらっしゃいます。

請求期限が迫ると、訴訟を提起する原告の数も増えてくることが予想されます。

そうなると、手続きにかかる時間も長くなるため、早めの対応がおすすめです。

参考:B型肝炎訴訟|法務省

B型肝炎訴訟の手続きにかかる費用

B型肝炎訴訟の手続きを進めるには、訴訟手続き自体にかかる費用と、弁護士に依頼する場合は弁護士費用が必要です。

ここでは、訴訟手続きにかかる費用と弁護士に依頼する場合の費用に分けて、どのくらいの費用がかかるのかを解説します。

訴訟手続にかかる費用

訴訟手続きを進めるには、証拠資料を収集するための費用と提訴の際の収入印紙・切手代が必要です。

証拠資料を収集するための費用は、医療機関からどのような証拠を取得する必要があるかによって大きく変わってきます。

特別な検査が必要な場合には、数万円の費用がかかるケースもあります。

提訴にかかる収入印紙の額は、給付金の請求額によって変わります。

最低額の50万円を請求する場合の印紙代は5,000円ですが、最高額の3,600万円を請求する場合には、12万8,000円が必要です。

提訴の際の切手代は裁判所によって異なりますが約5,000円から6,000円ほどとなっています。

参考:手数料額早見表|裁判所

弁護士に依頼する場合の費用

弁護士費用は、次の3つに分けられます。

  • 相談料…法律相談の際に発生する費用
  • 着手金…手続きを依頼する際に発生する費用
  • 報酬金…給付金を受け取る際に発生する費用

B型肝炎訴訟については、相談料・着手金を無料としている法律事務所が多くみられます。

報酬金は、給付金の額の15%~20%ほどが弁護士費用の相場となっています。

なお、B型肝炎訴訟で弁護士に依頼する場合には、国から支給金の4%の補助を受けられます。

そのため、実質的には給付金の額の11%~16%ほどが弁護士費用の負担額となるケースが多いです。

B型肝炎給付金を受け取るには?

B型肝炎給付金を受け取るには、訴訟手続きが必要です。

ここでは、給付金を受け取るための要件と、給付金の金額の概要を解説します。

給付金を受け取るには要件を満たすことが必要

B型肝炎給付金を受け取るには、一次感染者が次の5つの要件を満たしていることが必要です。

  1. 昭和16年7月2日から昭和63年1月27日までに生まれたこと
  2. B型肝炎ウイルスに持続感染していること
  3. 満7歳になるまでに、集団予防接種等を受けていること
  4. B型肝炎ウイルス感染が母子感染によるものでないこと
  5. B型肝炎ウイルス持続感染に集団予防接種等以外の原因がないこと

また、二次感染者が給付金を受け取るには、次の3つの要件を満たしていることが必要となります。

  1. 母親が一次感染者の要件を満たしていること
  2. 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
  3. 母子感染であること

B型肝炎支給金を受け取る要件を満たしている可能性のある方は、訴訟手続きによって要件を満たしていることを証明することで、給付金の支給を受けることができます。

B型肝炎給付金の給付金額

給付金の額は、症状や発症からの期間によって一律に決められています。

 20年の除斥期間が経過していない場合20年の除斥期間が経過した場合
死亡・肝がん・肝硬変(重度)3,600万円900万円
無症候性キャリア600万円50万円
 20年の除斥期間が経過していない場合20年の除斥期間が経過した場合で、現に治療中の方20年の除斥期間が経過した場合で、現に治療中以外の方
肝硬変(軽度)2,500万円600万円300万円
慢性B型肝炎1,250万円300万円150万円

参考:B型肝炎訴訟の手引き(14頁)|厚生労働省

給付金以外の費用

B型肝炎の感染者が受け取れるのは、給付金だけでありません。

以下も確認しておきましょう。

無症候性持続感染者の手当

無症候性持続感染者の定期検査費や医療費の一部について手当が支給されます。

訴訟等に係る弁護士費用

B型肝炎訴訟で弁護士に依頼した場合、給付金額の4%の弁護士費用が支給されます。

特定B型肝炎ウイルス感染者であることを確認するための検査費用

一部の検査については、検査費用が支給されます。

B型肝炎訴訟をする際の注意事項

ご自身で訴訟をするべきか、弁護士に依頼すべきか迷われる方もいらっしゃるかと思います。

しかし、以下の注意事項を確認したうえで、慎重に始めることも大切です。確認しておきましょう。

証拠資料の不足に要注意

B型肝炎訴訟を提起する際に、最も重要なのは規定の証拠資料を集めることです。

しかし、自分で資料を集めるのは、「B型肝炎訴訟の手引き」を参照しても難しいケースが多いです。

証拠資料の収集が不十分な場合、そもそも訴訟を受理してもらえなかったり、手続きの過程で追加資料を求められたりして、解決までに長い期間がかかってしまいます。

時間をかけても、裁判所や国の指示に応えられない場合には、最後まで支給金を受け取れなかったり、本来受け取れる額よりも支給金の額が低くなったりする可能性もあるでしょう。

そのため、証拠資料の収集や訴状の作成に不安のある方は、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士への依頼には費用がかかりますが、手続きが遅延したり、給付金が受け取れなくなったりするデメリットを考慮すると、依頼するメリットの方が大きいといえるでしょう。

弁護士選びは慎重に

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼する場合は、B型肝炎訴訟の取り扱い実績や費用を十分に確認するようにしてください。

取り扱い実績や費用は、法律事務所によってさまざまなので、確認せずに依頼してしまうと満足する結果を得られずに後悔してしまう可能性もあります。

また、弁護士との相性も重要です。

実績の豊富な弁護士でもご自身との相性が悪ければ、訴訟を進行する過程でストレスと抱え続けることになってしまいます。

質問に対する回答がわかりやすいか、スムーズに連絡を取ることができるかなど、弁護士を選ぶ際には相性にも注意しましょう。

さいごに|B型肝炎訴訟は弁護士への依頼がおすすめ

B型肝炎訴訟の解決までには約2年もの期間がかかります。

手続きの内容は複雑で、自分で手続きを進める場合にはさらに時間がかかる場合もあるでしょう。

弁護士に依頼すると、全ての手続きを弁護士に任せられるため負担なく手続きを進められます。

請求が認められるための適切な主張・立証ができるため、和解が成立する可能性も高くなるでしょう。

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