B型肝炎ウイルスは感染力が強いため、家族や交際相手にうつる可能性があります。

ウイルスの感染経路によってうつる確率が異なるので、以下のような疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。

  • B型肝炎が家族にうつる確率は?
  • B型肝炎になると性行為はできない?
  • B型肝炎キャリアの血液に触ってしまったら感染する?
  • B型肝炎は治るの?

B型肝炎ウイルスが空気感染や飛沫感染するケースはほとんどありませんが、キスや性行為はうつる確率が高くなります。

本記事では、B型肝炎ウイルスがうつる確率と感染経路、B型肝炎訴訟を弁護士に依頼すべき理由などをわかりやすく解説していきます。

B型肝炎なら弁護士に無料で相談
この記事を監修した医師
福地 裕三(にじいろクリニック新橋)
にじいろクリニック新橋の院長の福地です。性感染症を中心にED、AGA、ピルなどの処方も行う自由診療のクリニックになります。患者様1人1人、必要な検査は異なりますしエビデンスのある治療を行う必要があります。正しい情報を提供するとともに解決策を見つけ出してご提案いたします。

B型肝炎の感染経路とうつる確率

B型肝炎ウイルスは唾液や血液などから感染しますが、感染経路によってうつる確率が異なります。

日常生活で感染する可能性もあるので、「家族にうつるのでは?」と気になっている方は以下を参考にしてください。

母子感染

母子感染は、B型肝炎ウイルスに持続感染している母親から生まれた子供がB型肝炎に感染することをいいます。

赤ちゃんは免疫機能やウイルスの排除機能が弱いため、ワクチン接種をしなかったときは、ほぼ100% B型肝炎ウイルスに感染します。

これを防ぐためには、出産後のできるだけ早い段階で感染防止策を始めた方がよいとされています。

1985年からは母子感染防止事業がスタートしており、B型肝炎ウイルスに感染している母親が出産したときは、赤ちゃんにB型肝炎ワクチンが投与されます。

2016年4月1日以降の9年後には、事業開始前に比べてキャリア率が10分の1に低下したとされています。

性行為による感染

B型肝炎ウイルスは唾液や精液、膣分泌液にも含まれるため、性行為でも感染します。

近年では性行為によるB型肝炎ウイルス感染者も増えているようで、その感染力はHIVに比べて50~100倍ともいわれています。

B型肝炎は西太平洋地域やアフリカ地域に感染者が多いので、海外で性行為があったときは、医療機関で感染の有無を検査しておいたほうがよいでしょう。

また、成人の感染は一過性になるケースも多いようですが、持続感染により後々肝硬変や肝臓がんになることもあるので要注意です。

食事やトイレ

食器やトイレを共用した場合、B型肝炎ウイルスがうつる確率はかなり低いでしょう。

B型肝炎ウイルスは唾液にも含まれますが、血液や体液を介して感染するものなので、食事を一緒に食べることによる感染の心配はありません。

ただし、赤ちゃんに口移しで食べ物を与えると、唾液感染する確率が高くなるので注意してください。

銭湯やプールなど

銭湯やプール、自宅のお風呂では、B型肝炎ウイルスが体液から水やお湯に溶け込む可能性もありますが、水中で薄くなるため、うつる確率は0%に近いでしょう。

B型肝炎の感染者が銭湯やプールの利用を制限されることはなく、最期にお風呂を使う必要もないので安心してください。

家族が介護を必要としており、入浴を介助した場合でも、B型肝炎ウイルスに感染することはないでしょう。

身体接触が多いスポーツなど

ラグビーやサッカーのように身体接触が激しいスポーツや、子ども同士の遊びでは、血液や体液が傷口に触れたことでB型肝炎ウイルスに感染した事例があります。

血液が乾燥しても1週間程度はウイルスが生きているため、かさぶたの状態でも油断はできません。

ただし、スポーツなどが原因の感染例はほとんどなく、血液に触ってしまった場合は石けんで洗い流し、衣類は洗濯すればB型肝炎ウイルスを除去できます。

血液の透析や輸血

血液透析や輸血を受けた方も、B型肝炎ウイルスに感染した事例があります。

各医療機関では感染者と非感染者の透析機械を区別するなど、院内感染の防止を図っていますが、透析や輸血の時期が古い方は感染している恐れがあるので要注意です。

また、胃カメラの使用や臓器移植などの手術を受けた場合も、時期によってはB型肝炎ウイルスに感染しているケースがあるでしょう。

以下の集団予防接種と同じく、1988年頃までに血液透析や輸血を受けている場合、現在まで肝炎を発症していなくても、ウイルスが肝臓にすみついている可能性があります。

集団予防接種などによる感染

1948年7月1日~1988年1月27日の間で、満7歳になるまでに集団予防接種などを受けている場合、注射器の使い回しが原因でB型肝炎に感染しているケースがあります。

感染した母親から生まれた子どもや、その子どもなど、二次感染や三次感染の事例もあるため、感染者は推定45万人以上といわれています。

集団予防接種などが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した場合、B型肝炎給付金の支給対象になるので、該当する方は必ず請求しておきましょう。

なお、1987年以降は注射器の交換が徹底されているため、現在は予防接種などが原因でB型肝炎ウイルスに感染することはありません。

B型肝炎の潜伏期間はどれくらい?

B型肝炎ウイルスの潜伏期間は平均75日程度です。

ただし、人によって差があるため、感染から30日後や、半年後に肝炎などを発症するケースもあります。

また、感染直後のB型肝炎ウイルスは検出が難しいので、血液検査を受けるタイミングは感染から30日~60日程度経過した時点となります。

検査のタイミングが早すぎると、ウイルス感染を見逃してしまう恐れがあるので注意してください。

B型肝炎に感染したかも?と思ったら血液検査を

B型肝炎ウイルスに感染した可能性があるときは、必ず血液検査を受けましょう。

血液検査ではHBs抗原と呼ばれるB型肝炎ウイルスのたんぱく質を調べ、陰性または陽性を判定します。

検査結果が陽性だった場合、より詳しく感染状況調べる必要があるので、肝臓専門の医療機関で以下の検査も受けてください。

【抗原の検査】

抗原の種類検査でわかること
HBs抗原B型肝炎への感染
HBe抗原B型肝炎ウイルスの感染力や増殖力の強さ

【抗体の検査】

抗体の種類検査でわかること
HBs抗体B型肝炎の治癒状況やウイルス抗体ができているかどうか
HBc抗体IgM-HBc抗体:慢性肝炎の悪化や最近の感染であるかどうか gG-HBc抗体:数値が高ければB型肝炎キャリア、低ければ過去の感染
HBe抗体B型肝炎ウイルスの活性状況や感染力

B型肝炎ウイルスの感染を防止する方法

B型肝炎ウイルスはワクチン接種で感染防止できますが、日常生活にもいくつか注意点があります。

持続感染したB型肝炎ウイルスは体外に排出されないので、以下のように対処しておきましょう。

B型肝炎ワクチンを接種する

B型肝炎のワクチンを接種すると抗体ができるので、母子感染などの予防策になります。

赤ちゃんのB型肝炎ワクチン接種は2016年10月から定期化されており、生後2~8ヵ月の間に3回の接種を受けますが、公費負担なので費用はかかりません。

また、小児や成人については、1回5,000~8,000円程度の自己負担でB型肝炎ワクチンの任意接種を受けられます。

任意のワクチン接種回数も3回になっており、1回目と2回目の間隔が4週間程度、2回目と3回目は16~20週程度の間隔をあけて接種します。

さらに、3回目のワクチン接種から4~8週間後に検査をおこない、抗体ができているかどうかを判定するので、半年以上かかるケースもあるでしょう。

日常的な感染予防をおこなう

B型肝炎ウイルスは家族や交際相手にうつる可能性があるので、感染者が身近にいる場合は特に、以下のように日常的な感染予防をおこなってください。

  • 歯ブラシやカミソリなどは家族と共用しない
  • 血液が付着した衣類などはよく洗い、むき出しの状態では廃棄しない
  • トイレの後は流水でよく手を洗う
  • 出血をともなうけがや、鼻血はできるだけ自分で処置する
  • 乳幼児などに口移しで食べ物を与えない
  • 病院や歯科医院で治療を受けるときはB型肝炎であることを医師に告げておく
  • 性行為の際にはコンドームを使用する
  • 複数のパートナーと性的関係をもたない
  • B型肝炎ウイルスに感染していない配偶者や交際相手にはワクチン接種してもらう
  • 献血は絶対にしない

なお、B型肝炎の感染経路は正しく理解されていないケースがあるので、家族や交際相手には、空気感染や飛沫感染ではウイルスがうつらないことを伝えておきましょう。

B型肝炎は完治する?

B型肝炎ウイルスに感染した場合、持続感染と一過性感染で完治の見込みが異なります。

感染時期や免疫力も完治に影響するので、以下を参考にしてください。

B型肝炎ウイルスの持続感染

B型肝炎ウイルスの持続感染とは、ウイルスが6ヵ月以上にわたって肝臓に残る状態で、完治の見込みがありません。

特別な治療法もないので、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を使い続けることになるでしょう。

持続感染によって慢性肝炎になった場合、肝硬変や肝がんに進行するケースもあるので、倦怠感などの初期症状があるときは、必ず病院で検査を受けてください。

B型肝炎ウイルスの一過性感染

大人がB型肝炎ウイルスに感染した場合は一過性感染になるケースが多く、免疫力が高くなっているためにウイルスが体外へ排出されます。

また、一過性感染でも急性肝炎になる方もいらっしゃいますが、症状がおさまった後はウイルスが体外に排出され、抗体もできるので再び感染することはありません。

ただし、急性肝炎になった患者のうち、1~2%は劇症肝炎を発症する恐れがあるので要注意です。

劇症肝炎は70~80%程度の確率で死亡するため、急性肝炎の初期症状となる倦怠感や食欲不振、黄疸や吐き気があるときは、すぐに病院の検査を受けておきましょう。

B型肝炎に感染したら給付金を請求できる可能性がある

集団予防接種などが原因でB型肝炎ウイルスに感染していれば、国に対してB型肝炎給付金を請求できます。

B型肝炎の病態によっては3,600万円が支給されるので、以下の要件に該当する方は必ず請求してください。

集団予防接種などが感染原因だった場合

B型肝炎給付金の対象者は、1948年~1988年の間で満7歳になるまでに集団予防接種などを受け、B型肝炎ウイルスに持続感染した方です。

注射器の連続使用が感染経路であったため、集団予防接種などを主導した国側に責任があり、被害者への損害賠償としてB型肝炎給付金が支払われることになっています。

また、二次感染者や三次感染者もB型肝炎給付金の対象になるので、一次感染者となった母親から生まれた子どもや、その子どもも給付金を請求できます。

すでに感染者が亡くなっているときは、遺族にもB型肝炎給付金の請求が認められています。

ただし、B型肝炎給付金は2027年3月31日が請求期限になっており、国と和解できなければ支給されません。

訴訟手続きは以下のような流れになるので、給付対象になる方は早めに準備を進めておきましょう。

B型肝炎給付金を請求する方法

B型肝炎給付金を国に請求する場合、裁判所で訴訟を起こす必要があります。

ただし、B型肝炎訴訟はすでに国が過失を認めているため、勝ち負けの争いではなく、以下のような流れで国との和解を目指すことになります。

証拠や検査結果を集める

B型肝炎訴訟を起こすときは、集団予防接種などが感染原因である証拠や、B型肝炎の検査結果を裁判所に提出します。

具体的には、以下のような証拠や資料が必要です。

  • 母子健康手帳
  • カルテなどの医療記録
  • 健康診断の結果
  • 医師の意見書:接種痕意見書など
  • 被害者が亡くなっている場合は死亡診断書の写し
  • 戸籍謄本や住民票など

訴訟の必要書類は人によって異なりますが、医療記録は保存期間が決まっており、診療が終わった日から5年経過後に廃棄されます。

過去にB型肝炎の治療を受けていた方は、保存期間が過ぎる前に医療記録を請求してください。

病院側が医療記録の開示請求に応じてくれないときは、弁護にも相談しておきましょう。

国を相手に訴訟を起こす

B型肝炎給付金を請求するときは、被害者が原告となり、国を被告として訴訟を起こす必要があります。

裁判所が訴状を受理するとB型肝炎訴訟が始まるので、2~3ヵ月に1回程度は口頭弁論のために出廷し、自分の意見や主張を述べることになります。

しかし、訴訟手続きは個人対応が難しいため、未だに被害者全体の5分の1程度しかB型肝炎給付金を受け取れていません。

訴状の作成や口頭弁論などに対応できないときは、弁護士のサポートを受けるようにしてください。

国と和解できればB型肝炎給付金をもらえる

B型肝炎訴訟で国と和解できた場合、被害者の病態に応じて以下のB型肝炎給付金が支払われます。

 20年の除斥期間が経過していない場合20年の除斥期間が経過した場合
死亡・肝がん・肝硬変(重度)3,600万円900万円
無症候性キャリア600万円50万円
 20年の除斥期間が経過していない場合20年の除斥期間が経過した場合で、現に治療中の方20年の除斥期間が経過した場合で、現に治療中以外の方
肝硬変(軽度)2,500万円600万円300万円
慢性B型肝炎1,250万円300万円150万円

参考:B型肝炎訴訟の手引き(14頁)|厚生労働省

B型肝炎給付金は無症候性キャリアも対象になっており、血液検査の費用も支給されるので、給付要件に該当する方は訴訟を起こしておくべきでしょう。

ただし、損害賠償請求の期限となる除斥期間の20年を過ぎると、給付金が大きく引き下げられるので注意してください。

B型肝炎訴訟を弁護士に相談・依頼すべき理由

B型肝炎訴訟は終結までの期間が長く、証拠や資料の収集にも時間と労力がかかります。

仕事や家事に追われている方や、肝がんなどの治療を受けている方は、訴訟の準備だけでも大きな負担になるでしょう。

しかし、弁護士に相談・依頼すると以下のように対応してくれるので、依頼者の負担が軽くなり、B型肝炎給付金を受け取れる確率も高くなります。

証拠や資料から和解の見込みを判定してくれる

弁護士にB型肝炎訴訟を相談すると、証拠や資料を分析し、国と和解できる見込みを判定してくれます。

手元の証拠や資料が足りないときは、追加収集が必要となる書類や、不足している検査などのアドバイスを受けられるので、訴訟の準備態勢が整います。

弁護士の相談料は基本的に有料ですが、B型肝炎訴訟の相談は無料にしている弁護士が多いので、まず証拠類が揃っているかどうか無料でチェックしてもらいましょう。

なお、着手金無料の弁護士に依頼すると、B型肝炎給付金を受け取ったあとに報酬金を払えばよいため、まとまった資金がなくても訴訟手続きを依頼できます。

証拠や資料収集に協力してもらえる

弁護士は証拠や資料の収集にも協力してくれるので、何を揃えてよいかわからない方や、時間に余裕がない方は必ず相談してください。

たとえば、すでにカルテなどの医療記録が廃棄されている場合、医師の意見書が重要な証拠となりますが、個人からの依頼では作成してもらえない可能性があります。

また、医療記録が残っているケースでも、B型肝炎訴訟を前提に作成されるわけではないため、内容が不十分だったときは補足資料も必要です。

被害者の日記から集団予防接種による感染を立証できるケースもあるので、B型肝炎に関連した情報が残っていれば、すべて弁護士に提出してください。

個人対応ではなかなか証拠が集まらず、重要な証拠を見落とす恐れもあるので、困ったときは弁護士に対応を任せておきましょう。

弁護士が証拠や資料の収集に対応すると、医療機関の理解を得やすくなり、スムーズに証拠類が集まります。

訴訟手続きを代行してくれる

弁護士は被害者の代理人になれるため、訴訟手続き全般を代行してもらえます。

訴状の作成を弁護士に依頼しておけば、B型肝炎訴訟は確実に受理されるでしょう。

また、訴状の添付書類も弁護士に選定してもらうと、裁判所から追加資料を要求される確率が下がるため、時間と労力の節約にもなります。

被害者の代理人として出廷してくれる

弁護士にB型肝炎訴訟を依頼すると、被害者の代理人として裁判所に出廷してくれます。

一般的な民事裁判は1ヶ月に1回程度の頻度で裁判所に出廷し、口頭弁論に対応しなければなりませんが、B型肝炎訴訟は2~3ヵ月に1回程度の出廷となっています。

ただし、口頭弁論では証拠にもとづき、論理的な主張を述べなければならないため、医療関係の専門知識が必要になるでしょう。

場合によっては裁判所から追加資料の提出を求められますが、どこで何を揃えるのかわからず、次回の出廷までに準備できないケースもあります。

口頭弁論に不安がある方や、裁判所に出廷する時間を確保できない方は、必ず弁護士に依頼しておきましょう。

訴訟手当金も支給される

B型肝炎訴訟で国と和解できた場合、給付金額の4%が訴訟手当金として支給されます。

たとえば、給付金3,600万円を獲得できると訴訟手当金144万円が支給されるため、弁護士費用の全額負担はありません。

また、B型肝炎ウイルス感染者であることを証明するために血液検査を受けた場合は、国から検査費用も支給されます。

B型肝炎給付金が最低額の50万円になる方でも、症状が悪化したときは追加給付を受けられるので、訴訟を起こしておいたほうがよいでしょう。

さいごに|B型肝炎の感染が心配な方は検査予約を

B型肝炎に感染した場合、家族や交際相手にうつることがないか?と不安な日々を送ることになります。

一過性感染は完治するケースもありますが、持続感染は治る見込みがないため、B型肝炎キャリアと付き合う方法もよく考えておく必要があるでしょう。

なお、B型肝炎ウイルスの感染原因が集団予防接種などであれば、B型肝炎給付金をもらえる可能性があります。

B型肝炎給付金は請求方法が訴訟になるので、自分で対応できないときは必ず弁護士のサポートを受けてください。

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