B型肝炎給付金は制度概要があまり知られていないため、集団予防接種によって感染した方でも、給付金を請求していないケースが多いようです。
受給条件もわかりにくいので、以下のような疑問がある方もいらっしゃるでしょう。
- B型肝炎給付金の対象者はどんな人?
- B型肝炎給付金をもらえる人、もらえない人は何が違う?
- B型肝炎給付金の対象かどうかわからないときの相談先はある?
- B型肝炎給付金はいくらもらえるの?
- B型肝炎訴訟は弁護士に依頼した方がいいの?
B型肝炎給付金は国家賠償になるため、国に対して集団予防接種で感染したことを証明しなければなりません。
給付対象になると、最大3,600万円を受け取れるので、受給条件は必ずチェックしておきましょう。
ここでは、B型肝炎給付金の対象者となる条件や、弁護士に相談しておくメリットをわかりやすく解説していきます。
目次
B型肝炎給付金の対象者は?
B型肝炎給付金の対象者は以下のように分類されており、すでに被害者が亡くなっているときは、相続人も給付対象になります。
一次感染者 | 注射器や注射針が連続使用された集団予防接種やツベルクリン反応検査により、B型肝炎ウイルスに感染された方 |
---|---|
二次感染者 | 一次感染者から母子感染または父子感染された方 |
三次感染者 | 二次感染者から母子感染または父子感染された方 |
上記感染者の相続人 | 感染者の配偶者や子供など、一定範囲の法定相続人 |
一次感染者~三次感染者は給付金を受け取るための条件あり、資料や証拠などを揃えて対象者であることを証明します。
また、遺族がB型肝炎給付金を受け取る場合も、亡くなられた方が一次感染者~三次感染者の条件を満たしている必要があります。
それぞれの受給条件については、以下を参考にしてください。
B型肝炎給付金を受け取るための条件
B型肝炎給付金を受け取る場合、一次感染者~三次感染者それぞれが以下の条件を満たしている必要があります。
各条件はすべて満たしていなければならないので、集団予防接種の期間などを間違えないように注意しましょう。
一次感染者の方が受給する条件
一次感染者はとは、1948年7月1日~1988年1月27日の間に集団予防接種などを受け、B型肝炎ウイルスに感染した方です。
また、一次感染者の方は以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 満7歳になるまでに集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けていること
- 満7歳までに集団予防接種などを受けたことが母子手帳や接種痕などで確認できること
- 母子感染ではないこと
- 集団予防接種等以外の感染原因がないこと
母子感染ではないことを証明する場合は母親の血液を検査しますが、すでに亡くなられているときは、兄または姉の血液検査が必要です。
兄弟姉妹がおられない方は医学的な分析が必要になるので、医師や弁護士に相談してみましょう。
二次感染者の方がB型肝炎給付金を受給する条件
二次感染者の方がB型肝炎給付金を受給するときは、以下の条件をすべて該当する必要があります。
- 母親または父親が一次感染者の条件をすべて満たしていること
- 二次感染者の感染原因が母子感染または父子感染であること
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
母親が一次感染の条件を満たしていない場合、幼少期に父親の汗や涙などを介して二次感染しているケースがあります。
かつては出産による母子感染のみB型肝炎給付金の対象になっていましたが、2014年1月24日からは父子感染も給付対象になりました。
母子感染ではないために給付対象にならなかった方でも、父親に肝臓の病気があるときは、給付金をもらえる可能性があるでしょう。
三次感染者の方がB型肝炎給付金を受給する条件
三次感染者の方は、以下の条件をすべて満たすとB型肝炎給付金を受給できます。
- 母親または父親が二次感染者の条件をすべて満たしていること
- 二次感染者から三次感染者への感染原因が母子感染または父子感染であること
- 三次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
祖母や母親、父親のいずれかがB型肝炎給付金を受給していれば、肝炎などの症状がなくても三次感染している可能性があるので、血液検査を受けておいたほうがよいでしょう。
感染者の相続人がB型肝炎給付金を受給する条件
感染者の相続人がB型肝炎給付金を受給する場合、亡くなられた方が一次感染者~三次感染者の条件を満たしている必要があります。
また、給付金を受給できる方は以下の相続順位に従います。
- 亡くなられた方の配偶者:常に相続人となる
- 第1順位の相続人:亡くなられた方の子ども
- 第2順位の相続人:亡くなられた方の父母
- 第3順位の相続人:亡くなられた方の兄弟姉妹
相続順位が上位になる親族がいる場合、下位の親族はB型肝炎給付金を受給できません。
また、亡くなられた方との関係を証明するため、戸籍謄本を取得しておく必要があります。
相続発生から年数が経っており、亡くなられた方が受給条件を満たしていたかどうかわからないときは、弁護士に相談してください。
B型肝炎給付金をもらえないのはどんな人?
B型肝炎給付金をもらえない人は受給条件の勘違いが多く、「弁護士に相談したら対象者ではないことがわかった」というケースがあります。
また、集団予防接種などが原因のB型肝炎でも、給付金をもらえない人がいるので注意が必要です。
具体的には以下のような条件になるので、感染原因や生年月日などをよく確認しておきましょう。
一過性の感染だった人
一過性の感染とは、体の免疫機能でB型肝炎ウイルスが体外に排出され、一時的な感染で終わる状態です。
集団予防接種などが原因のB型肝炎であっても、一過性の感染ではB型肝炎給付金をもらえないので注意してください。
なお、B型肝炎給付金は「持続感染」が条件となっており、以下のどちらかの方法で検査できます。
- CLIA法またはCLEIA法のHBc抗体の検査により、結果が高力価陽性であること
- HBs抗原、HBe抗原、HBV-DNAのいずれかの検査を6ヵ月以上の間隔で2回おこない、いずれかの2時点で陽性であること
一過性または持続性のどちらかを判定することになるので、検査には1年近くかかる場合もあるでしょう。
なお、内科病院で血液検査を受けると5,000円程度の費用になりますが、国と和解できれば検査費用も支給されます。
生年月日が支給対象期間ではない人
B型肝炎給付金をもらえない人は生年月日が関係しており、以下のどちらかに該当すると受給できません。
- 感染者の生年月日が1941年7月1日以前の場合
- 感染者の生年月日が1988年1月28日以降で二次感染者の条件を満たさない場合
注射器や注射針の連続使用は1948年7月1日から1988年1月27日までおこなわれたため、この期間のみ被害者に対して国が賠償責任を持つことになります。
満7歳の誕生日以降に集団予防接種を受けている人
集団予防接種を満7歳以降に受けていた場合、B型肝炎給付金は受け取れません。
満7歳を迎えると体の免疫機能が十分になるため、B型肝炎ウイルスには持続感染しないものと考えられています。
母子健康手帳などを確認すると、国の責任期間となる1948年7月1日から1988年1月27日までの間に、満7歳を迎えて集団予防接種を受けたかどうかわかります。
一次感染者の条件を満たさない親から二次感染した人
母親や父親がB型肝炎ウイルスに持続感染していても、一次感染者の条件を満たさなければB型肝炎給付金はもらえません。
たとえば、母親の生年月日が1941年6月30日だった場合、一次感染者の条件を満たしていないため、集団予防接種以外の感染原因となります。
感染原因が集団予防接種ではない人
集団予防接種以外でB型肝炎ウイルスに感染した場合、B型肝炎給付金は受け取れません。
B型肝炎ウイルスの感染経路には輸血もあるので、血液製剤が原因で肝炎などにかかるケースもあります。
日本赤十字社は献血のB型肝炎検査を1972年から開始しているため、1971までに輸血を受けた方は、B型肝炎給付金をもらえない可能性があるでしょう。
また、集団予防接種以外の感染原因として、胃カメラや手術なども考えられます。
B型肝炎ウイルスの種類がジェノタイプAeの人
B型肝炎ウイルスの種類が「ジェノタイプAe」という遺伝子型の場合、大人になってからの感染が疑われるため、B型肝炎給付金はもらえません。
ジェノタイプAeは1996年に国内感染が確認されており、成人後でも持続感染するケースがあることから、B型肝炎給付金の対象外となっています。
医療記録などの資料や証拠が残っていない人
医療記録や血液検査の結果などが残っていない場合、集団予防接種などによる感染を特定できないため、B型肝炎給付金をもらえない可能性があります。
病院の保存期間を過ぎると医療記録などは廃棄されるので、感染時期が古い方や感染者が亡くなっている場合は、証拠や資料が集まらないことも少なくありません。
ただし、書類の廃棄漏れや、病院側が保管場所を間違えているケースもあるので、証拠が集まりにくいときは弁護士から問い合わせてもらうとよいでしょう。
B型肝炎給付金の対象者かどうかわからないときの対処法
B型肝炎給付金は受給するための条件が多いので、対象者かどうかわからないときは以下の窓口に相談してみましょう。
厚生労働省や弁護士に相談すると、受給条件や申請時の提出書類なども教えてもらえます。
厚生労働省の電話相談窓口に問い合わせる
厚生労働省ではB型肝炎給付金や訴訟に関する相談窓口を設置しており、以下の時間帯で無料相談を受け付けています。
- 電話番号:03-3595-2252
- 受付時間:年末年始を除く平日の9時00分~17時00分まで
B型肝炎給付金の制度概要や受給条件、申請書類などがわからないときは相談してみましょう。
ただし、厚生労働省ホームページの掲載内容や、ダウンロード用の書式に関する相談しか受け付けていないので、「給付金はいくらもらえる?」などの個別相談はできません。
カルテなどをチェックしてもらいたいときは、弁護士に相談したほうがよいでしょう。
【参考元】B型肝炎訴訟について(厚生労働省)
弁護士に相談してみる
B型肝炎給付金をもらえるかどうかわからないときは、弁護士にも相談してください。
B型肝炎訴訟の和解実績が豊富な弁護士に相談すると、手元の資料からB型肝炎給付金の対象者かどうか判定してくれます。
資料が不足するときは追加資料のアドバイスも受けられるので、給付金をもらえるかどうか早めに判断できるでしょう。
体調がすぐれない方や、病院や役場に出向く時間がない方は、資料や証拠収集も弁護士に依頼してください。
B型肝炎給付金は訴訟によって国に請求するため、弁護士に訴状の作成や出廷なども任せると、依頼者の負担も軽くなります。
身近に頼れる弁護士がいない方や、B型肝炎給付金に詳しい弁護士を探したい方は、ベンナビB型肝炎で実績豊富な弁護士を探してみましょう。
B型肝炎給付金の支給額
B型肝炎給付金は感染者の症状や、感染からの期間によって以下のように支給額が決まっています。
症状 | 給付金の額 | |
---|---|---|
20年経過前 | 20年経過後 | |
死亡や肝がん、重度の肝硬変 | 3,600万円 | 900万円 |
軽度の肝硬変 | 2,500万円 | ・現在、軽度の肝硬変にかかっている方:600万円・上記以外の方:300万円 |
慢性B型肝炎 | 1,250万円 | ・現在、慢性B型肝炎にかかっている方:300万円・上記以外の方:150万円 |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円 |
損害賠償請求できる最長期間は20年ですが、B型肝炎給付金は以下の起算点から20年を超えても請求できます。
- 肝炎や肝がんなどを発症した日、または再発日
- B型肝炎ウイルスに起因して感染者が亡くなられた日
ただし、20年を経過すると、給付額が大幅に下がるので注意してください。
B型肝炎給付金は無症状でも受け取れる
B型肝炎給付金は無症候性キャリアも対象になっており、一次感染や二次感染などを証明できれば、無症状の方も受け取れます。
祖母や母親、父親がB型肝炎ウイルスに持続感染している場合は、ご自身も給付金を受け取れる可能性があるでしょう。
ただし、無症候性キャリアも20年を経過すると給付額が少なくなるので、できるだけ早めに血液検査を受けてください。
B型肝炎給付金は追加支給も受け取れる
すでにB型肝炎給付金を受け取っていても、症状の悪化によって給付額のランクが上がったときは、追加給付を受け取れます。
B型肝炎給付金の請求期限は2027年3月31日までとなっていますが、一度給付金を受け取ると、請求期限を過ぎて症状が悪化した場合でも追加給付が認められます。
無症状で50万円の給付額になる方は、「裁判を起こしても50万円しかもらえない」と考えがちですが、症状悪化のリスクを考えると、給付金は受け取っておくべきでしょう。
さいごに|B型肝炎給付金の対象かどうか迷ったときは弁護士に相談を
B型肝炎給付金は一定条件を満たすと確実にもらえますが、問題は集団予防接種による感染や、二次感染・三次感染を立証できるかどうかです。
また、B型肝炎給付金の対象者であることを証明する場合、戸籍謄本や医療記録など、膨大な資料を集めなければなりません。
証拠や資料は時間が経つほど集めにくくなり、給付金の請求期限までに立証作業が完了しない可能性もあるでしょう。
B型肝炎給付金の対象者になるかどうか判断できないときや、証拠や資料を確保しておきたいときは、できるだけ早めに弁護士へ相談してください。