B型肝炎ウイルスに感染すると、肝がんなどを発症する可能性があるので、早めの予防接種が必要です。
しかし、以下のような疑問や不安があり、B型肝炎の予防接種を受けるべきか、迷っている方もいらっしゃるでしょう。
- B型肝炎の予防接種は大人でも受けるべき?
- B型肝炎の予防接種は赤ちゃんも受けるべき?
- B型肝炎の予防接種に副作用はないの?
- B型肝炎の予防接種はどこで受けられる?
B型肝炎の予防接種を受けなかった場合、ウイルス感染によって死亡する可能性があるので注意が必要です。
本記事では、B型肝炎の予防接種を受けるべき人や、予防接種を受けなかったときの影響、B型肝炎訴訟を弁護士に依頼すべき理由などをわかりやすく解説していきます。
目次
B型肝炎の予防接種を受けるべき理由
B型肝炎ウイルスは日常生活に感染リスクが潜んでいるため、免疫力の高い大人であっても予防接種を受けておくべきです。
予防接種によってB型肝炎ウイルスへの抗体ができれば、以下のようなリスクを回避できます。
B型肝炎ウイルスは感染力が強いため
B型肝炎ウイルスは感染力が高く、体液を介して感染します。
血液が乾燥しても1週間程度は感染力が続くため、けがをした手でかさぶたに触れると、傷口からB型肝炎ウイルスに感染する可能性もあります。
ウイルスタイプが異なるC型肝炎や、HIVウイルスに比べると、B型肝炎ウイルスの感染力は50~100倍程度になるので、日常生活で感染するリスクはかなり高いでしょう。
B型肝炎ウイルスに感染する機会が多いため
B型肝炎ウイルスの感染者数は日本国内で推定110万~140万人、全世界では約2億9,600万人といわれています。
感染者との性行為や出産による母子感染、父親の汗や涙から父子感染するケースもあるため、感染する機会が極めて多いウイルスといえるでしょう。
医療機関で感染する可能性はほとんどありませんが、かつては注射器の使い回しが状態化していた時期があり、集団予防接種で感染した方も多くいらっしゃいます。
B型肝炎ウイルスに感染しても、すぐには症状がでないケースがあるので、気付かないうちに感染者を拡大させている可能性も考えられます。
家族が肝臓の病気にかかっているときは、念のためB型肝炎の予防接種を受けておきましょう。
【参考元】公益社団法人・日本WHO協会
B型肝炎は死亡する可能性があるため
B型肝炎の感染状態には以下の持続感染と一過性感染があり、どちらも死亡する可能性があるので注意が必要です。
- 持続感染:ウイルスが長期にわたって肝臓にすみ続ける状態
- 一過性感染:感染してから数か月後にウイルスが体外に排出される一時的な感染状態
乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染すると、高確率で持続感染になるため、慢性肝炎から肝硬変や肝がんに進行したときは、死亡リスクが高くなるでしょう。
大人は免疫力が高いため、B型肝炎ウイルスに感染しても体外に排出され、一過性感染で終わるケースが多くなっています。
ただし、一過性感染でも急性肝炎を発症する場合があり、稀に劇症肝炎に進行する可能性があります。
劇症肝炎の死亡率は70%程度になるので、B型肝炎の予防接種を受けることをおすすめします。
【参考元】B型肝炎の疾患別解説(厚生労働省・関西空港検疫所)
B型肝炎ウイルスの予防接種を受けるべき人
B型肝炎ウイルスに感染するリスクの高い人は、できるだけ早めに予防接種を受けてください。
具体的には以下のような人が該当するので、ご自身だけではなく、家族や交際相手も予防接種を受けたほうがよいケースがあります。
2016年3月31日までに生まれた子ども
2016年4月1日以降に生まれた子どもについては、0歳児を対象にB型肝炎ウイルスの予防接種が義務化されたため、公費負担で無料のワクチン接種を受けられます。
一方、2016年3月31日までに生まれた子どもの場合、B型肝炎の予防接種が義務化されておらず、ワクチンは任意接種しなければなりません。
B型肝炎の予防接種は1回あたり5,000円~1万円程度になっており、約半年間で3回受ける必要があるため、合計1万5,000円~3万円程度の費用がかかります。
任意接種の費用は自己負担になりますが、幼い子どもは免疫機能が不十分なので、できるだけ早めに予防接種を受けておくべきでしょう。
B型肝炎キャリアの家族や交際相手
B型肝炎にかかっている人をB型肝炎キャリア、またはHBVキャリアといいます。
家族や交際相手がB型肝炎キャリアの場合、以下の感染経路でB型肝炎ウイルスがうつる可能性があるため、予防接種を受けておくべきです。
- 性行為による感染
- 母子感染や父子感染
近年のB型肝炎キャリアについては、半数程度が性行為による感染といわれています。
B型肝炎キャリアから生まれた子どもは感染率が100%に近いため、性行為の際にはコンドームを使い、出産後は必ず予防接種を受けてください。
なお、B型肝炎キャリアと食器やお風呂を共用しても、ウイルス感染する可能性はほとんどありません。
トイレの使用後も確実に流し、流水で手洗いしておけば、感染する恐れはないので安心してください。
医療従事者や消防士など
医療従事者や消防士は血液や体液に触れる機会が多いので、B型肝炎の予防接種は必須といえるでしょう。
医師や看護師が予防接種を受けていないケースは考えられませんが、消防士は必要とされるワクチン接種を受けていない場合があるので注意してください。
B型肝炎の予防接種を受けていない署員がいる場合、管理者や所属長が適切な指導をおこない、1日でも早く接種を済ませておくべきでしょう。
臓器移植や透析を受けている人
B型肝炎ウイルスは臓器移植や血液透析、輸血によって感染するケースもあります。
現在は各医療機関で院内感染の防止を徹底していますが、手術を受けた時期や透析の開始時期が古い方は、念のために予防接種や血液検査を受けたほうがよいでしょう。
海外渡航が多い人
海外渡航が多い人もB型肝炎ウイルスの感染確率が高いので、予防接種を受けるようにしてください。
B型肝炎キャリアは世界中に分布していますが、東南アジアや中東、南アフリカや東ヨーロッパ地域は感染者が特に多く、成人人口の5~10%に達している国もあります。
海外で性行為をしたり、血液や体液に触れる機会があったりしたときは、ワクチン接種や血液検査を受けておくべきでしょう。
【参考元】2016年7月のB型肝炎ファクトシート(厚生労働省)
B型肝炎の予防接種は赤ちゃんも受けるべきかどうか?
生まれたばかりの赤ちゃんでも、基本的にはB型肝炎の予防接種を受けておく必要があります。
母親や父親だけが予防接種を受けても十分とはいえないため、以下のようにB型肝炎ウイルスの定期接種を受けてください。
2016年4月1日以降に生まれた赤ちゃんは定期接種の対象
出生が2016年4月1日以降の赤ちゃんについては、2016年10月1日からB型肝炎ワクチンの定期接種がスタートしています。
公費負担の定期接種は0歳児を対象としており、乳幼児のうちにワクチン接種を受けると大人よりも免疫ができやすく、効果は10~20年続くといわれています。
B型肝炎の免疫ができると、一過性感染だけではなくキャリア化も防止できるので、必ず3回の定期接種を受けてください。
なお、公費の予算額は自治体ごと異なるため、お住まいの地域によっては接種費用の一部を自己負担するケースがあります。
定期接種できる医療機関と費用
赤ちゃんがB型肝炎ワクチンの定期接種を受けるときは、出産した産婦人科、または各自治体が委託している医療機関へ申請してください。
基本的に0歳児の定期接種は公費負担ですが、体調不良などの理由でワクチン接種の時期が伸びると、1歳を超えて2回目や3回目の接種を受けるケースがあります。
満1歳を迎えた乳幼児や、大人が予防接種を受けるときは保険適用されないので、1回につき5,000円~1万円程度の費用がかるでしょう。
ただし、自治体によっては定期接種を受けられなかった乳幼児を対象に、助成金や補助金を支給しているケースもあります。
定期接種のスケジュール
B型肝炎ワクチンの定期接種は3回受ける必要があり、以下のようなスケジュールになっています。
- 1回目の接種:赤ちゃんの場合は生後2ヵ月頃に接種
- 2回目の接種:1回目の接種から27日以上の間隔をおいて接種
- 3回目の接種:1回目の接種から139日以上の間隔をおいて接種
抗体ができたかどうかを調べるときは、3回目の定期接種から4~8週間後に検査を受けてください。
抗体検査は1回あたり5,000円程度の費用がかかります。
任意接種できる医療機関
満1歳を迎えた乳幼児や、大人がB型肝炎の予防接種を受ける場合、保険が適用されない任意接種になります。
任意接種のスケジュールも定期接種と変わらないので、3回目のワクチン接種を終えるまでは、日数をしっかり管理しておきましょう。
任意接種はほとんどの内科病院で受けられますが、B型肝炎の検査・治療に詳しい病院を探したいときは、肝炎医療ナビゲーションシステムを利用してください。
B型肝炎予防接種の危険性と副作用
B型肝炎の予防接種は危険性や副作用リスクが極めて低く、以下の副作用があっても一般的には自然回復します。
- 頭痛や発熱
- 吐き気や食欲不振
- 接種部分の痛みやかゆみ、腫れやしこりなど
- 筋肉痛や関節痛
- 悪寒
- 発疹
- 下痢
ただし、副作用の症状が長引いたときや、症状が重いときは早めに病院の診察を受けてください。
B型肝炎の予防接種を受けられない人
B型肝炎の予防接種が必要であっても、以下に該当する方は接種しないように注意してください。
- 37.5℃以上の発熱がある人
- 重篤な急性疾患などにかかっている人
- B型肝炎の予防接種でアナフィラキシーのアレルギー反応があった人
- かかりつけの病院で予防接種を受けないほうがよいといわれた人
予防接種を受ける日は必ず体温を測り、少しでも発熱があるときや、体調不良を感じたときは、接種日を延期したほうがよいでしょう。
B型肝炎ワクチンの接種前と接種後の注意点
B型肝炎ワクチンを接種する前や、接種したあとには以下の注意点があります。
基本的には体調のよいときに予防接種を受け、接種後の体調管理にも気を付けておきましょう。
ワクチン接種前の注意点
B型肝炎のワクチンを接種する前は、以下の点に注意してください。
- 体調がすぐれないときや、発熱があるときは予防接種を控える
- 予防接種の際には母子健康手帳や健康保険証、予診票を必ず持参する
- アレルギーのある方は医師に伝えておく
予診票は各自治体から送付されますが、近親者の情報を「はい・いいえ」で記入する欄もあるので、先天性免疫不全などの情報は正確に把握しておきましょう。
ワクチン接種後の注意点
B型肝炎ワクチンを接種したあとは、以下の点にも注意してください。
- 接種後30分は病院内で安静にしておく
- すぐに病院を出るときは医師と連絡を取れるようにしておく
- 激しい運動や大量の飲酒は避ける
- 接種部分を清潔にしておく
- 接種部分をこすらないようにする
ワクチン接種後に異常な反応があったときは、すぐに医師の診察を受けておきましょう。
特に赤ちゃんがワクチン接種したときは、異常がないかどうか、親がしっかり観察しておく必要があります。
なお、ワクチン接種日に入浴しても問題はありません。
B型肝炎給付金をもらえる可能性がある人
B型肝炎ウイルスの感染原因が集団予防接種やツベルクリン反応検査だった場合、一定要件に該当する人は国からB型肝炎給付金をもらえます。
戦後間もない頃から1980年代後半にかけては、集団予防接種などで注射器の使い回しがあったため、B型肝炎に血液感染した方が推定45万人以上いるといわれています。
以下の要件に該当する方は、必ずB型肝炎給付金を請求しておきましょう。
一次感染者
B型肝炎給付金の対象になる一次感染者とは、1948年7月1日~1988年1月27日の間に集団予防接種などを受け、以下の要件に該当するB型肝炎キャリアです。
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染ではないこと
- 満7歳までに集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けていること
- 満7歳までの集団予防接種が母子手帳や接種痕などで確認できること
- 集団予防接種等以外の感染原因がないこと
母子感染ではない場合、母親の血液検査によって証明できますが、母親がすでに亡くなっているときは年長の兄弟姉妹の血液を検査します。
兄弟姉妹がいらっしゃらない方は、医師に医学的な分析を依頼してみましょう。
二次感染者
母子感染や父子感染した被害者を二次感染者といい、以下の要件に該当している場合はB型肝炎給付金をもらえます。
- 母親や父親が一次感染者の要件をすべて満たしていること
- 二次感染者の感染原因が母子感染や父子感染であること
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
父子感染は2014年1月24日からB型肝炎給付金の対象なったので、母子感染ではないことから過去に給付金を諦めていた方も、現在は請求可能です。
三次感染者
集団予防接種などが原因で三次感染した場合、以下の要件をすべて満たすとB型肝炎給付金をもらえます。
- 母親または父親が二次感染者の要件をすべて満たしていること
- 三次感染の原因が母子感染または父子感染であること
- 三次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
すでに祖母や父母がB型肝炎給付金を受給している場合、三次感染のキャリアになっている確率が高いので、予防接種や血液検査を受けておいたほうがよいでしょう。
亡くなった感染者の相続人
集団予防接種などが原因のB型肝炎キャリアの方が亡くなっており、一次感染者~三次感染者の要件を満たしていたときは、以下の相続人がB型肝炎給付金を受給できます。
【相続人の範囲と相続順位】
- 亡くなられた方の配偶者:常に相続人となる
- 第1順位の相続人:亡くなられた方の子ども
- 第2順位の相続人:亡くなられた方の父母
- 第3順位の相続人:亡くなられた方の兄弟姉妹
相続順位が上位になる親族がいる場合、下位の親族には相続権が発生しないため、B型肝炎給付金は受け取れません。
一般的には、配偶者と子どもが給付金を受け取ることになるでしょう。
B型肝炎給付金の支給額
B型肝炎給付金の支給額は以下のようになっており、肝炎などの症状があらわれていなくても、キャリアであれば請求が認められます。
病態 | B型肝炎給付金の額 | |
20年経過前 | 20年経過後 | |
死亡や肝がん、重度の肝硬変 | 3,600万円 | 900万円 |
軽度の肝硬変 | 2,500万円 | ・現在、軽度の肝硬変にかかっている方:600万円 ・上記以外の方:300万円 |
慢性B型肝炎 | 1,250万円 | ・現在、慢性B型肝炎にかかっている方:300万円 ・上記以外の方:150万円 |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円[ho1] |
表の見やすさが人によって異なるようなので、B型肝炎のキーワードの記事内で、給付金の額についての表を3つほど作成しております。お手数をおかけしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
肝がんや肝硬変などの発症日や再発日、B型肝炎に起因して亡くなった日から20年を経過すると、給付金の額が大幅に下がるので注意してください。
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するとよい理由
B型肝炎給付金は請求方法が訴訟になるため、手続きの進め方がわからない方は弁護士に依頼しておきましょう。
弁護士にB型肝炎訴訟を依頼すると以下のように対応してくれるので、依頼者の負担が軽くなり、給付金を受け取れる確率も高くなります。
証拠や資料から国との和解を予測してくれる
弁護士に医療記録や母子健康手帳などを提示すると、B型肝炎訴訟で国と和解できるかどうか予測してくれます。
B型肝炎訴訟は国との和解を目指す裁判なので、十分な証拠や資料が揃っていれば、高確率でB型肝炎給付金を受け取れます。
不足している検査や医療記録などがあれば、何を追加したらよいのかアドバイスしてもらえるので、弁護士に相談しておけば準備万端の体制で訴訟を起こせるでしょう。
訴状の作成や証拠収集に協力してもらえる
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼した場合、訴状の作成や証拠収集にも協力してもらえます。
訴状の様式は厚生労働省のホームページから入手できますが、添付書類が多く、血液検査の数値なども書き込む必要があるので、弁護士に任せたほうが確実です。
また、医療記録は保存期間が決まっているため、すでに廃棄されている場合は医師の意見書が重要証拠になりますが、必ずしも作成してもらえるとは限りません。
しかし、弁護士が対応すると病院の理解を得やすいので、医療記録や医師の意見書もスムーズに入手できるでしょう。
【参考元】B型肝炎訴訟について(厚生労働省)
裁判所に代理人として出廷してくれる
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼すると、被害者の代理人として出廷にも対応してくれます。
裁判所への出廷は2~3ヵ月に1回程度ですが、期日は裁判所が決めるため、多忙な方は都合を合わせられない可能性があります。
また、出廷の際には口頭弁論がおこなわれるので、集団予防接種などでB型肝炎ウイルスに感染したことを論理的に主張しなければなりません。
出廷に対応できそうにない方や、口頭弁論に不安がある方は、弁護士に代理人を依頼しておきましょう。
B型肝炎給付金の4%を訴訟手当金として受け取れる
B型肝炎訴訟で国と和解できた場合、給付金の4%が訴訟手当金として加算されます。
B型肝炎給付金が3,600万円であれば、4%分の144万円が加算されるので、合計3,744万円を受け取れます。
弁護士費用は受け取った給付金から支払えばよいので、一般的な民事訴訟よりも金銭的な負担は軽いでしょう。
B型肝炎給付金の請求期限内に訴訟を起こせる
弁護士にB型肝炎訴訟を依頼すると、給付金の請求期限までに訴訟を起こせます。
B型肝炎給付金は2027年3月31日が請求期限になっているので、弁護士に訴訟手続きを依頼すると、訴状の受理まで持ち込んでくれるでしょう。
また、国と和解できた場合は、請求期限後に症状が悪化しても追加給付を受け取れます。
さいごに|B型肝炎に悩んでいる方は弁護士に相談を
B型肝炎の予防接種は誰でも受けられるようになっており、定期接種だけではなく、自分の都合に合わせた任意接種も可能です。
集団予防接種などが感染原因だったときは、必ずB型肝炎給付金も請求しておきましょう。
ただし、B型肝炎給付金には請求期限があり、訴訟を起こす必要もあるので、個人対応では国と和解できない可能性があります。
B型肝炎訴訟に困ったときは、まず弁護士に相談しておきましょう。