B型肝炎訴訟で給付金を請求するには、訴状など裁判所へ提出する書類の準備が必要です。
裁判所への出廷なども必要になるため、一般的には弁護士へ依頼します。
しかし、弁護士に依頼しようと思っても、次のような不安や悩みが出てきてしまいます。
- B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するとどれくらい費用はかかる?
- 弁護士費用の相場はどれくらい?
- B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリットは?
- どうやって弁護士を選べばいい?
本記事では、B型肝炎訴訟を依頼する際の弁護士費用や内訳、弁護士に依頼するメリット、弁護士を選ぶ際のポイントなどを解説していきます。
B型肝炎訴訟に困っている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
B型肝炎訴訟にかかる弁護士費用の内訳
弁護士費用は一律ではなく、法律事務所ごとに金額設定が異なります。
B型肝炎訴訟にかかる弁護士費用の内訳と、それぞれの費用相場について解説します。
相談料|無料の事務所が多い
相談料とは、弁護士に法律相談をする際に発生する費用です。
弁護士へ依頼する前に法律相談をすることが大半となり、法律相談によって相談者は依頼するかどうかを判断します。
法律相談をするハードルを下げるためにも、初回相談は無料の法律事務所が多いです。
B型肝炎訴訟の相談も初回は無料の事務所が多いですが、相談料が生じるケースもあります。
相談料が発生する場合、30分5,000円が相場となっています。
着手金|無料の事務所が多い
着手金は、弁護士に正式依頼をした際に発生する費用です。
法律問題へ着手することで発生する費用なので、B型肝炎給付金が受け取れるかどうかの結果とは関係なく支払う必要があります。
ただし、B型肝炎訴訟については多くの法律事務所が着手金を無料としています。着手金が発生する場合は、30万円~50万円が相場です。
成功報酬|獲得した給付金の数%
成功報酬は、法律問題の解決の成功の程度に応じて発生する費用です。
B型肝炎訴訟の場合、訴訟で和解が成立して給付金が得られた場合に発生します。金額は、給付金の〇%といった形で設定されることが多く、18%前後が相場と法律事務所ごとに異なります。
給付金を受け取るまでの流れとしては、弁護士が給付金を本人に代わって受取り、そこから成功報酬などが差し引かれて本人へ支払われるのが一般的です。
そのため、成功報酬は依頼人が別途準備する必要はありません。
その他の費用|実費や日当
問題解決後、成功報酬とは別に実費や日当を請求されるようなケースもあります。
実費は裁判費用や資料収集にかかった費用、郵便代などが該当します。日当は弁護士の出張が必要になった際の費用で、交通費や宿泊費、出張手当などが含まれます。
なお、実費と日当は給付金の中から支払われることになるため、給付金が受け取れない場合には別途支払う必要があります。
B型肝炎訴訟の弁護士費用は「成功報酬のみ」であるケースが多い
弁護士費用は法律事務所ごとに設定が異なりますが、B型肝炎訴訟の場合は相談料・着手金が無料で、実質「成功報酬のみ」であるケースが多いです。
その理由には、以下のようなことが挙げられます。
被害者が相談しやすくなるため
まず成功報酬のみの事務所が多い理由は、B型肝炎の感染者は国の過失によって重大な健康被害を受けた被害者であり、その支援をおこなうという目的があるからです。
そのため、多くの法律事務所は相談料や着手金を無料にしています。相談料・着手金を無料にすることで被害者の費用負担が大幅に軽減され、被害者が弁護士費用を気にすることなく相談しやすくなるため、成功報酬のみの法律事務所が多いのです。
B型肝炎訴訟は和解による給付金額を予測しやすいため
B型肝炎訴訟では、救済対象者への給付金支給に関する内容が「B型肝炎特措法」によって制度化されています。
B型肝炎訴訟の和解で得られる給付金額も、症状や除斥期間の有無によって以下のように決められています。
20年の除斥期間が経過していない場合 | 20年の除斥期間が経過した場合 | |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 3,600万円 | 900万円 |
肝硬変(軽度) | 2,500万円 | 治療継続中の場合 600万円それ以外の場合 300万円 |
慢性B型肝炎 | 1,250万円 | 治療継続中の場合 300万円それ以外の場合 150万円 |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円 |
参照:厚生労働省「B型肝炎訴訟について(救済対象の方に給付金をお支払いします)」
給付金の対象者や金額が画一的に決められているため、相談を受けた弁護士は給付金額が予測しやすく、成功報酬を具体的に見積もることができます。
このように依頼時に報酬水準の判断ができることから、着手金を無料にしても問題ないと判断している法律事務所が多いと考えられます。
B型肝炎訴訟の成功報酬のうち実質4%は国が負担してくれる
B型肝炎訴訟では、訴訟を提起するためにかかった弁護士費用を「訴訟手当金」として国から助成金を受け取れます。
この訴訟手当金は、給付金の4%に相当する金額です。
(参照:厚生労働省「B型肝炎訴訟の手引き第5版」)
たとえば、弁護士に依頼して300万円の給付金が支給されることになった場合、4%の12万円が上乗せされ、総額312万円が支給されます。
被害者にとって訴訟手当金があれば弁護士費用の負担が大幅に軽減されます。
そのため、弁護士費用は訴訟手当金として一部返ってくるということを念頭に置いて弁護士費用の比較や弁護士への相談をご検討ください。
B型肝炎訴訟で弁護士費用以外にかかる費用
B型肝炎訴訟では、弁護士費用以外にも実費として次のような費用がかかります。
必要書類の収集にかかる費用|1万円前後
裁判の申立には、申立書以外にも添付する書類が必要です。
B型肝炎訴訟で必要になる主な書類と、書類の取得費用は以下の通りです。
- 戸籍謄本 450円/通
- 除籍謄本 750円/通
- 戸籍の附票 300円/通
- 住民票 300円/通
- 医療記録の開示費用 3,000円~1万円
- 接種痕意見書 3,000円~5,000円
- 診断書 5,000円前後
必要書類は一次感染者と二次感染者によって異なるため、詳しい内容は弁護士へご確認ください。
収入印紙代|請求金額によって異なる
裁判所へ訴訟を提起するには、訴訟費用が発生します。
訴訟費用は請求金額ごとに法律で定められており、決められた金額を裁判所へ収入印紙で支払います。
B型肝炎訴訟の場合は症状ごとに請求金額が異なるため、収入印紙代は以下のようになります。
病態 | 除斥期間 | 請求金額 | 印紙代 |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 20年未満 | 3,600万円 | 12万8,000円 |
20年以上 | 900万円 | 4万6,000円 | |
肝硬変(軽度) | 20年未満 | 2,500万円 | 9万5,000円 |
20年以上 | 治療継続中の場合 600万円それ以外の場合 300万円 | 治療継続中の場合 3万4,000円それ以外の場合 2万円 | |
慢性B型肝炎 | 20年未満 | 1,250万円 | 5万6,000円 |
20年以上 | 治療継続中の場合 300万円それ以外の場合 150万円 | 治療継続中の場合 2万円それ以外の場合 1万2,000円 | |
無症候性キャリア | 20年未満 | 600万円 | 3万4,000円 |
20年以上 | 50万円 | 5,000円 |
参照:裁判所「手数料額早見表」
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼する場合の注意点
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼する場合、注意しておきたい点がいくつかあります。
依頼してから後悔しないように、以下の内容をあらかじめ知っておきましょう。
弁護士費用が安ければいいというわけではない
弁護士費用は安い方を選びたくなるかもしれませんが、納得いく形で弁護士に依頼したいのであれば、あまり安さにこだわりすぎない方がいいかもしれません。
弁護士を選ぶ際は、費用だけではなく、経験や実績、コミュニケーション力など安心して依頼できるのかどうかという要素にも注目すべきです。
B型肝炎訴訟は国から訴訟手当金を受け取れることや、相談料・着手金が無料の法律事務所が多いことから、他の訴訟に比べると弁護士費用の負担は軽いといえます。
そのため、費用以外の面にもしっかり目を向けて弁護士選びをおこないましょう。
成功報酬の表記に注意
B型肝炎訴訟では、多くの法律事務所が成功報酬を「給付金の〇%」という形式で設定していることを説明しました。
この成功報酬の金額表示は、訴訟手当金の4%を差し引いた後の金額を「実質給付金の〇%」などとして表示する場合があります。
たとえば、訴訟手当金を差し引いた「実質給付金の14.5%」と表示しているケースと、訴訟手当金を差し引く前の「給付金の17%」と表示しているケースでは、前者が安く感じられます。
実際は「実質給付金の14.5%」の場合、訴訟手当金を加えた18.5%が報酬総額になるため、後者の方が安くなります。
成功報酬の表記はしっかり確認し、曖昧な場合は依頼前に確認しておくようにしましょう。
無症候性キャリアの場合の報酬
B型肝炎訴訟では成功報酬が報酬額の〇%という設定の法律事務所が多いですが、無症候性キャリアの場合は報酬額に注意が必要です。
無症候性キャアは20年の除斥期間を経過していない場合の給付金は600万円ですが、除斥期間を経過している場合は給付金が50万円になります。
そのため、「給付金50万円の場合」として異なる成功報酬を設定している法律事務所も少なくありません。該当する方は、成功報酬の内訳を必ず確認しましょう。
B型肝炎訴訟を依頼する弁護士選びのポイント
B型肝炎訴訟の依頼をする場合、適正な給付金額を受け取るためにも信頼できる弁護士を選びたいものです。
弁護士を選ぶ際には、次のポイントに注目しましょう。
B型肝炎訴訟の実績や経験
弁護士はそれぞれ得意分野が異なるため、B型肝炎訴訟の実績や経験を豊富な弁護士を選びましょう。
B型肝炎訴訟は国を相手とする特殊な訴訟なので、法律知識以外にもB型肝炎に関する医学的な知識を求められます。B型肝炎訴訟の実績や経験が豊富な弁護士に依頼すれば、適正な給付金額をスムーズに受け取ることができます。
B型肝炎訴訟に力を入れている弁護士を選ぶ際は、ホームページに専用ページが設けられているかどうかや、対応件数が記載されているかどうかをチェックしてみましょう。
説明のわかりやすさ
訴訟は弁護士に依頼して終わりではなく、弁護士から訴訟や今後の方針などについて説明を受けることになります。その際、説明のわかりやすさも弁護士を選ぶ際の注目すべきポイントだとえいます。
なぜなら、依頼者は弁護士から受けた説明に納得した上で訴訟を進めることが大切だからです。
専門的で難しい言葉ばかりを使ったり、回りくどい言い方をしたりするようなケースは、説明の内容がわからないまま訴訟を進めることになります。そうすると、適正な金額を受け取れずに不利益を被る可能性もあるのです。
説明がわかりやすいかどうかは、最初の相談の際に必ず確認するようにしましょう。
コミュニケーションのスムーズさ
弁護士は複数の依頼を抱えていることが多く、場合によっては電話やメールなどのレスポンスが遅いこともあります。
しかし、レスポンスが遅ければ訴訟をスムーズに進められるのかと不安になります。
依頼者の不安を解消するためにもレスポンスが早く、コミュニケーションをスムーズに取りやすい弁護士を選ぶことをおすすめします。
正式に依頼する前にメールや電話などでやり取りをしていれば、コミュニケーションのスムーズさを確認できるでしょう。
また、相談の際に依頼者の話をしっかり聞いてくれるかという点も大切です。
丁寧に話を聞き、質問に的確に答えてくれる弁護士ならば、コミュニケーションを円滑にとることができます。
依頼者と弁護士がチームとなって訴訟を進めることになるため、円滑なコミュニケーションで信頼関係を築くことも重要です。
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリット
B型肝炎訴訟は個人でも提起できますが、弁護士に依頼するケースが多いです。
なぜそのようなケースが多いのか、B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリットを知っておきましょう。
国から訴訟手当金を受け取れる
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼して給付金を受け取れた場合、給付金の4%相当の金額が「訴訟手当金」として支給されます。
個人で訴訟を提起するメリットは弁護士費用がかからないという点ですが、書類準備などの手間や時間がかかることや、適正な給付金額を受け取れない可能性があるなどデメリットも多くなります。
B型肝炎訴訟では弁護士費用の助成が受けられるため費用負担は軽減され、手続き等を全て弁護士に任せられるのでメリットは大きいでしょう。
訴訟の見通しを立てられる
B型肝炎の給付金を受け取るには、一定の条件を満たさなくてはなりません。
B型肝炎訴訟の実績や経験が多い弁護士に依頼すれば、給付金が受け取れるかどうかを的確に判断できます。
ご自身で知識がないまま訴訟準備を進めると、実際は対象者から外れているにもかかわらず気付かない可能性があります。そうすると、結果的に給付金はもらえず、時間と労力を費やすだけになってしまいます。
自分が給付金の対象者に該当するかを正しく判断し、正確に訴訟をすすめるためには、弁護士に判断してもらうのが最適だと言えます。
書類準備の手間が省ける
裁判の提起には多くの書類収集や書類作成が必要なので、そのために膨大な時間と労力を費やすことになります。
個人で進めると、仕事や家事など日常生活と並行して書類準備を進めるになるので非常に大変です。
弁護士に依頼すれば、書類収集や書類作成の手間を省けるのでメリットは大きいでしょう。
迅速に給付金を受け取れる
B型肝炎給付金は受給資格や病態によって準備すべき書類が異なります。
個人で書類準備をすれば書類不足や内容の誤りなどで再提出が必要になり、スムーズに進められない可能性もあるでしょう。
弁護士は適切に必要書類を集め、提出前には書類の不足やミスがないように精査します。
また、病態を立証するために医師とコミュニケーションを取って診断書を作成してもらえるため、適正な給付金の受給が期待できます。
裁判所への出廷を任せられる
裁判所の出廷は平日の日中になるため、仕事や子育てなどがある方は出向くのも難しいでしょう。
弁護士に依頼すれば、代理人として依頼者の代わりに裁判所へ出廷してくれるので、ご自身で出廷する必要はありません。
さいごに|B型肝炎訴訟は弁護士に相談してみましょう
B型肝炎訴訟の弁護士費用は訴訟手当金が国から助成されるため、被害者の方の費用負担は大幅に軽減されます。
個人で訴訟を提起することもできますが、弁護士に依頼すればスムーズに訴訟を進められるので、適正な給付金額を受け取れる可能性が高まります。
まずは弁護士に相談し、B型肝炎給付金の対象者に該当するのかどうか確認することから始めてください。