B型肝炎ウイルスの感染を確認するための、もっとも一般的な方法とされているのは血液検査です。
血液検査では、B型肝炎ウイルスの抗原と抗体の有無を調べることで、現在の感染状態や過去の感染歴を把握することができます。
過去におこなわれていた集団予防接種等によって、50代の方々は過去にB型肝炎ウイルスに感染している可能性があります。
検査を受けることで自身の健康状態をよりよく理解し、必要に応じて早期に治療や対策を講じることができるでしょう。
本記事では、B型肝炎ウイルスの感染を検査する方法や、詳細な検査項目について解説します。
目次
B型肝炎ウイルスの感染は普通の血液検査で調べられる
「B型肝炎ウイルスの検査」と聞くと、専門機関で受けなければならないようなイメージを持つ方もいるでしょう。
しかし、これらの検査は通常の健康診断や血液検査でも実施でき、B型肝炎の有無や感染状態を把握するうえで重要な手段となります。
B型肝炎ウイルスの有無をチェックするための血液検査は、HBs抗原・HBe抗原と抗体・HBV-DNAの量を測定することでおこなわれます。
抗原や抗体の検査結果が陽性であった場合は体内にB型肝炎ウイルスが存在することを意味し、その量を知ることも可能です。
HBs抗原の検査は、B型肝炎ウイルス感染のスクリーニングに用いられます。
HBe抗原が陽性のケースではウイルス量が多く、HBe抗体が陽性のケースではウイルス量が少ないことを示します。
HBV-DNAの量によって、血液中のウイルス量を正確に測定することが可能です。
B型肝炎ウイルスの検査項目|抗原・抗体はどこを見ればいい?
B型肝炎ウイルスの検査では、ウイルスの感染状態や治療経過を判断するために、血液検査を通じて特定の抗原と抗体を調べます。
抗原と抗体は「ウイルスマーカー」と呼ばれ、感染の有無や免疫の状態を示す重要な指標となります。
検査項目 | 検査結果からわかること |
HBs抗原 | 陽性ならB型肝炎ウイルスに感染していることがわかる |
Hbs抗体 | 陽性なら過去にB型肝炎ウイルスに感染し、すでに治癒したことを指す *HBVワクチンを接種している場合は陽性になる |
HBc抗体 | 陽性ならB型肝炎ウイルスに感染したことがわかる *HBVワクチンを接種している場合は陰性になる |
HBc-IgM抗体 | 直近でB型肝炎ウイルスに感染したことがわかる |
HBe抗原 | 陽性なら一般にB型肝炎ウイルスの増殖力が強いことがわかる |
HBe抗体 | 陽性なら一般にB型肝炎ウイルスの増殖力が低くなっていることがわかる |
HBV-DNA | 血液中のB型肝炎ウイルスの量がわかる |
【参考】肝炎情報センター
B型肝炎ウイルスの抗原とは?
B型肝炎ウイルスの抗原には、HBs抗原・HBc抗原・HBe抗原の3種類が存在します。
似通った名称ですが、それぞれ異なる特徴を持っている抗原です。
抗原の種類 | 概要 |
HBs抗原 | ウイルスの外殻を構成するたんぱく質で、感染の有無を判定する際に最初に調べられる抗原 |
HBc抗原 | ウイルスの内部に存在し、日常検査で直接検出されることはないものの、その存在はウイルスの感染を示す |
HBe抗原 | ウイルスが活発に増殖している状態を示し、この抗原が存在することは感染力が強いことを意味する |
B型肝炎ウイルスの抗体とは?
B型肝炎ウイルスに対する抗体には、HBs抗体、HBc抗体(IgM-HBc抗体とIgG-HBc抗体)、HBe抗体があります。
どの抗体が存在するのかによって、B型肝炎の状況を判断することが可能です。
抗体の種類 | 概要 |
HBs抗体 | 過去にB型肝炎ウイルスに感染したが治癒した場合、またはHBワクチンを接種した場合に陽性となり、HBVに対する免疫ができていることを示す |
H Bc抗体 | HBVに感染したことを示す抗体で、IgM型は感染初期、IgG型は感染後長期にわたって血中に存在する |
HBe抗体 | ウイルスの増殖が落ち着いている状態を示す抗体で、感染力が弱いことを意味する |
B型肝炎ウイルスの検査はどこで受けられる?費用は?
B型肝炎ウイルスの検査は、一般的な医療機関や保健所、健康診断などで受けることができます。
この検査は、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを確認するための血液検査であり、感染症検査の中でも一般的です。
以下では、B型肝炎ウイルスの検査が受けられる場所や必要な費用、検査にかかる期間などを解説します。
B型肝炎ウイルスの検査を受けられる場所
B型肝炎の血液検査は、ごく一般的な検査であり、さまざまな場所で受けることができます。
主に検査がおこなわれているのは、以下のような場所です。
- 市区町村の肝炎ウイルス検診
- 勤務先の健康診断
- 自分で選んだ医療機関
- 献血時の検査
- 術前検査
- 妊婦検診
保健所や市区町村が委託する医療機関では、ほとんどのケースで検査は無料で受けられます。
ただし、実施期間や対象者の条件が設けられていることがあるため、事前の確認が必要です。
B型肝炎ウイルスの検査にかかる費用
検査場所 | 費用 |
自治体による検査 | 無料のことが多い |
健康診断のオプション検査 自費検査 | 1,000円~5,000円 |
B型肝炎の検査費用は、検査を受ける場所によって異なります。
自治体が実施する検査はほとんどのケースで無料ですが、健康診断でのオプション検査や医療機関での自費検査では、1,000円から5,000円程度の費用がかかることが一般的です。
健康保険が適用されることもありますが、保険適用になる条件は医療機関によって異なります。
B型肝炎ウイルスの検査にかかる期間
B型肝炎の検査結果が出るまでの期間は検査を受ける場所や検査機関の状況によって異なりますが、一般的には数日から1週間程度で結果を確認することができます。
検査結果が陽性だったときは、迅速に肝疾患専門の医療機関を受診して適切な対策を講じることが重要です。
B型肝炎ウイルスの検査結果が陽性だったときの対処法
B型肝炎ウイルスの検査結果が陽性と判明した場合、まずは医療機関を受診する必要がありますが、それ以外に考えなければならないのが給付金の受給についてです。
以下では、B型肝炎給付金の対象者かどうかの確認方法や給付金額の相場、そして訴訟が得意な弁護士への相談方法について解説します。
B型肝炎給付金の対象者か確認する
B型肝炎訴訟による給付金の対象者とされるのは、国の集団予防接種を原因としてB型肝炎ウイルスに持続感染した方です。
B型肝炎に感染した方全員が対象となるわけではないため、受給資格・和解要件・給付金額について正確に理解し、自身が対象者であるかどうかを確認することが第一歩となります。
対象者の割合は全体の10~20%と少ないため、集団予防接種による感染の可能性があるケースでは、まず弁護士に相談することをおすすめします。
B型肝炎訴訟で受け取れる給付金額の相場
B型肝炎訴訟によって得られる給付金額は、症状の重さや除斥期間の経過有無によって異なります。
症状が死亡・肝がんなど重度なケースは最大で3,600万円の給付が受けられるほか、無症候性キャリアでも600万円の給付が受けられます。
症状 | 給付金額 (20年経過前) | 給付金額 (20年経過後) |
死亡 肝がん 肝硬変(重度) | 3,600万円 | 900万円 |
肝硬変(軽度) | 2,500万円 | 600万円(現在治療を受けている方) 300万円(上記以外の方) |
慢性肝炎 | 1,250万円 | 300万円(現在治療を受けている方) 150万円(上記以外の方) |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円+定期検査費 |
集団予防接種等がおこなわれてから20年が経過すると、「除斥期間」という制度によって大幅に減額されることが特徴です。
無症候性キャリアの場合、除斥期間が経過しても給付金に加えて母子感染や世帯内感染を防ぐための定期検査費が支給されます。
B型肝炎訴訟が得意な弁護士に相談する
B型肝炎の給付金は、国に対して訴訟を起こし、和解することで受給できます。
しかし、B型肝炎訴訟は複雑で専門的な知識が必要とされるため、経験豊富な弁護士に相談することが得策です。
弁護士は訴状の作成・必要書類の収集サポート・書類の精査・裁判所への出廷代行など、訴訟に必要なプロセス全般をサポートしてくれます。
また、弁護士費用の一部は国からの補助が受けられるケースもあるため、まずは相談から始めることをおすすめします。
B型肝炎の血液検査に関するよくある質問
B型肝炎の血液検査は、B型肝炎ウイルス(HBV)に対する感染状態を確認するための重要な手段です。
血液検査を通じて、HBVの有無や感染していたときの進行状況を把握することができます。
しかし、検査結果に関して一般の方にはわかりづらい部分も多いため、以下では、血液検査に関するよくある質問について解説します。
B型肝炎は性行為で感染しますか?
自分自身がB型肝炎に感染しているとわかったとき、まず不安になるのが配偶者などパートナーへの二次感染です。
事実、性行為による接触はウイルスの主な感染経路として知られています。
B型肝炎ウイルスは感染者の血液や体液に含まれており、ウイルスが粘膜や傷口を通じて他の人の体内に侵入することで感染が発生します。
そのため、性行為の際には適切な予防策を講じることが重要です。
複数のパートナーがいるケースやパートナーの感染状況が不明なケースでは、感染リスクが高まると考えておきましょう。
b型肝炎の抗体があると言われたのですが、感染していますか?
血液検査によってB型肝炎の抗体が検出された場合、その意味は状況によって異なります。
たとえばHBs抗体が検出されたケースでは、過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがあり、体がウイルスに対する免疫を獲得したことを示しています。
理由としては、感染後に自然治癒したか、B型肝炎のワクチン接種による治癒が考えられます。
一方で、HBc抗体が検出されたケースでは、過去に感染したことを示しているものの、現在もウイルスが体内に存在しているかどうかは不明です。
そのため、HBV-DNA検査など他の検査によって確認する必要があります。
また、体内に抗体があったとしても、定期的なフォローアップ検査が推奨されます。
さいごに
B型肝炎の血液検査を受けることは、自身の健康状態を知るとともに必要な対策を講じるための第一歩です。
検査によってHBVの抗原や抗体の有無が明らかになれば、感染の有無だけでなく、感染後の免疫状態やウイルスの活動性についても把握することができるでしょう。
もし検査結果が陽性であった場合は、専門の医療機関での相談や治療、さらにはB型肝炎給付金の受給資格があるかどうかの確認も不可欠です。
自分自身や家族の健康を守るためにも、定期的な検査と早期の対応をおすすめします。