B型肝炎訴訟を起こして給付金を受け取るときは、事前にB型肝炎の検査が必要です。
国と和解できれば給付金を受給できるので、できるだけ早めの検査をおすすめします。
しかし、検査にあたっては以下のような疑問や不安もあることでしょう。
- B型肝炎の検査はどこで受けられる?
- B型肝炎の検査費用はいくらかかる?
- B型肝炎の検査は保険適用なの?
- 陽性だったらどうすればいい?
B型肝炎給付金を請求する場合、集団予防接種などが感染原因であることを証明しなければならないため、B型肝炎検査は重要な意味を持ちます。
本記事では、B型肝炎検査を受けられる場所や費用、陽性だったときの対応についてわかりやすく解説していきます。
目次
B型肝炎の検査にかかる費用は?どこで受けられる?
B型肝炎の症状がある方や、B型肝炎ウイルスへの感染が疑われる方は、以下の医療機関などで血液検査を受けられます。
費用や検査タイミングがそれぞれ異なるので、自分に合った検査場所を選んでください。
各自治体の肝炎ウイルス検診|無料
各自治体では無料の肝炎ウイルス検診を実施しており、保健所や委託先の病院で血液検査を受けられます。
検査対象は住民登録している方になり、検査日も決まっていることが多いので、役場の保険課などに問い合わせてみましょう。
また、自治体によっては以下のような条件も指定されています。
- 勤め先の会社で肝炎ウイルス検診を受けられないこと
- 過去にB型肝炎やC型肝炎ウイルス検査を受けていないこと
- 40歳などの一定年齢に達していること
- B型肝炎の治療中または治療後ではないこと など
検査日や保健所・病院の場所などについては、各自治体のホームページを参照してください。
会社の健康診断や人間ドック|1,000円~3,000円程度
会社で健康診断や人間ドックを受ける場合、オプションの追加でB型肝炎かどうか検査してもらえます。
肝炎ウイルス検診のオプション料金は1,000円~3,000円程度ですが、全額負担してくれる会社もあります。
また、海外派遣労働者や、海外勤務から帰国した人については、B型肝炎ウイルスの抗体検査を必須にしている会社もあるので、総務担当などに問い合わせてみましょう。
会社の健康診断や人間ドックは時期が限られますが、会社側が手配してくれるので予約の手間などを省けます。
かかりつけの病院|3,000円~5,000円
かかりつけの病院であれば、3,000円~5,000円程度で肝炎ウイルスを検診してもらえます。
内科病院は肝炎ウイルス検診に対応しているケースが多く、検針日も自分の都合に合わせられます。
検診費用は少し高くなりますが、年齢などの制限もないので、自治体や会社の検診を受けにくいときは、かかりつけの病院に相談してみましょう。
妊婦検診や手術前の検査・献血で判明するケースも
妊婦健診にはB型肝炎の検査があり、母子感染によって赤ちゃんがB型肝炎ウイルスにした場合は、ワクチン接種も受けられます。
また、手術前の検査や胃カメラ検査を受ける場合、医師や看護師への感染を防止するため、B型肝炎検査が実施されます。
献血の場合は血液製剤に使えるかどうか検査されるので、B型肝炎に感染していたときは、日本赤十字社から今後の献血を控える旨の通知があるでしょう。
なお、B型肝炎の検査を目的とした献血はしないように注意してください。
B型肝炎検査の費用は自費?保険適用される?
B型肝炎の検査を受ける場合、自治体は無料なので保険を気にする必要はありませんが、会社の健康診断や内科病院は以下のように保険適用が異なります。
- 会社の健康診断や人間ドック:健康保険は非適用
- かかりつけ病院の検査:治療のための検査は健康保険が適用される場合あり
会社の健康診断などは病気やけがの治療を目的としていないため、B型肝炎のオプション検査を受けても健康保険は使えません。
ただし、一定要件を満たすと、初回の精密検査や定期検査の助成金を受けられるので、本次期後半の解説を参考にしてください。
また、内科病院のB型肝炎検査も基本的には健康保険を使えませんが、治療の一環として行う検査であれば、保険が適用されるケースもあります。
B型肝炎の検査項目は?目安となる数値や判定方法
B型肝炎には以下のような検査項目があり、陽性の目安となる数値や判定方法が決まっています。
検査項目 | 検査目的 | 陽性・陰性の判断 |
HBe抗体検査 | B型肝炎の持続感染を判定 | CLIA法の検査では、HBe抗原が1.0 s/co未満が陰性、1.0 s/co以上の場合が陽性 |
HBs抗原検査 | CLIA法の検査では、HBs抗原が0.05IU/ml未満が陰性、0.05IU/ml以上が陽性 | |
HBV分子系統分解検査 | 父親からの感染ではないことおよび、母親からの感染であることを証明するため | 塩基配列を確認し、ウイルスが同じものであると判明した場合陽性 |
HBVジェノタイプ検査 | Ae型などの肝炎ウイルスやサブタイプのウイルス感染を判定 | 遺伝子型によりジェノタイプAかそれ以外のジェノタイプかどうかが判明 |
HBVサブジェノタイプ検査 | タイプがAa、Ae、Ba、Bj、C、D、E、F、G、Hまたは「検出されず」かどうかが判明 |
肝炎ウイルスがジェノタイプAeだった場合、1988年1月27日までにおこなわれた集団予防接種等による感染ではないと判定されるため、B型肝炎給付金はもらえません。
B型肝炎の検査は結果が出るまでにどれくらいかかる?
B型肝炎には即日検査と精密検査があり、それぞれ以下の期間で検査結果がわかります。
- B型肝炎ウイルスの即日検査:15分~30分程度
- B型肝炎ウイルスの精密検査:4~5日程度
ただし、感染直後はB型肝炎ウイルスが検出されないため、即日検査は感染の機会から2ヵ月程度、精密検査は35日程度経過してから検査を受ける必要があります。
唾液や血液、性行為などにより、B型肝炎ウイルスへの感染が疑われるときは、少なくとも感染機会から1ヵ月以上経ったタイミングで検査を受けてください。
B型肝炎の検査結果が陽性だったときの対応方法
B型肝炎の検査結果が陽性だったときは、症状がなくても肝臓専門の病院で検査を受けてください。
また、一定要件を満たす場合、都道府県や市町村から検査費用の助成金も受け取れます。
集団予防接種などが感染原因であれば、B型肝炎給付金を受け取れる可能性があるので、以下のように対応しておきましょう。
肝臓専門の検査を受ける
B型肝炎の感染が判明したときは、目立つ症状がなくても肝臓専門の病院で検査してください。
一過性感染の場合、B型肝炎ウイルスが体外に排出され、そのまま治癒するケースもありますが、1~2%の確率で劇症肝炎になる恐れがあるので要注意です。
劇症肝炎の死亡率は70~80%と高いため、身体のだるさや食欲不振などの自覚症状があるときは、早めに肝臓の検査を受けておきましょう。
B型肝炎ウイルスが肝臓に6ヵ月以上残った場合、持続感染の影響で慢性肝炎になるケースもあります。
持続感染すると完治は困難になりますが、抗ウイルス薬などの投薬により、ウイルスの増殖を抑える必要があるでしょう。
なお、肝臓専門の医療機関をネットで調べるときは、肝炎医療ナビゲーションシステムを利用してください。
B型肝炎の検査費用や治療費の助成金を申請する
B型肝炎の検査結果が陽性だったときは、初回検査や定期検査の際に以下の助成金を受け取れます。
- 肝炎初回精密検査費用助成金
- 定期検査費用助成金
- 肝炎治療医療費助成金
助成金の対象者や助成額はそれぞれ異なるので、以下の解説を参考にしてください。
肝炎初回精密検査費用助成金
肝炎初回精密検査費用助成金とは、各自治体の肝炎ウイルス検診や会社の健康診断、妊婦健診などでB型肝炎が判明した場合、初回精密検査の費用を助成する制度です。
制度利用の窓口は各都道府県になっており、以下の検査費用が助成金の対象です。
- 医師が必要と判断した場合の初診料および再診料
- 血液形態・機能検査
- 出血・凝固検査や血液化学検査
- 総コレステロール
- 腫瘍マーカー
- 微生物核酸同定・定量検査
- 超音波検査
- ジェノタイプ判定などの肝炎ウイルス関連検査
助成回数は1回のみとなり、1年以内の肝炎ウイルス検査で陽性と判定された方のみ、各種検査費用の助成金を受けられます。
また、助成金を申請するときは、診療明細書や領収書、肝炎ウイルス検査の結果通知書などが必要になるので、失くさないように注意してください。
定期検査費用助成金
定期検査費用助成金とは、B型肝炎ウイルスの影響で肝がんや肝硬変などの治療を受けており、収入が一定額に満たない方について、以下の検査費用を助成する制度です。
- 医師が必要と判断した場合の初診料および再診料
- 肝硬変や肝がんのCT撮影またはMRI撮影検査
助成回数は1年度に2回のみとなり、以下のように検査費用の自己負担額も設定されています。
区分 | 検査1回あたりの自己負担限度額 | |
慢性肝炎 | 肝硬変や肝がん | |
市町村民税課税年額が23万5,000円未満の世帯に属する人 | 2,000円 | 3,000円 |
住民税非課税世帯に属する人 | 0円 | 0円 |
定期検査費用助成金を申請するときは、病院の領収書や診療明細書、住民票の写しなどが必要になるので、各都道府県の担当窓口に問い合わせてください。
肝炎治療医療費助成金
肝炎治療医療費助成金とは、患者の世帯所得に応じて、以下の抗ウイルス治療費を助成する制度です。
- B型慢性活動性肝炎に対するインターフェロン治療
- B型慢性肝疾患に対する核酸アナログ製剤治療
助成金の対象治療は保険適用されるものだけに限定されており、以下のように自己負担額の上限も決まっています。
世帯所得の区分 | ひと月あたりの自己負担限度額 |
市町村民税課税年額が23万5,000円以上の世帯に属する人 | 2万円 |
市町村民税課税年額が23万5,000円未満の世帯に属する人 | 1万円 |
肝炎治療医療費助成金の申請にも診断書や住民票の写しなどを提出しますが、対象医療によって助成期間が異なるので、必ず各都道府県の担当窓口に確認してください。
B型肝炎訴訟で給付金を請求する
B型肝炎の感染原因が集団予防接種やツベルクリン反応検査だった場合、一次感染者や二次感染者、三次感染者は国にB型肝炎給付金を請求できます。
給付額はB型肝炎の症状に応じており、訴訟を起こして国と和解できた場合に限り、以下の金額を受け取れます。
B型肝炎給付金は最大3,600万円
B型肝炎給付金の額は以下のように設定されており、最大で3,600万円を受け取れます。
20年の除斥期間が経過していない場合 | 20年の除斥期間が経過した場合 | |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 3,600万円 | 900万円 |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円 |
20年の除斥期間が経過していない場合 | 20年の除斥期間が経過した場合で、現に治療中の方 | 20年の除斥期間が経過した場合で、現に治療中以外の方 | |
肝硬変(軽度) | 2,500万円 | 600万円 | 300万円 |
慢性B型肝炎 | 1,250万円 | 300万円 | 150万円 |
B型肝炎給付金は国から被害者への損害賠償になるので、集団予防接種などが感染原因であることを証明できれば、基本的には請求どおりに支払われます。
ただし、以下の起算日から20年を経過すると、給付金が大幅に減額されるので注意してください。
- 肝炎や肝がんなどの発症日や再発日
- B型肝炎ウイルスに起因して感染者が死亡した日
感染時期が古い方は、当時の医療記録などを調べる必要があるでしょう。
無症状でも検査費用を請求できる
B型肝炎の症状が出ていなくても、集団予防接種などによる感染を確認するための検査であれば、国に検査費用を請求できます。
また、無症状でも体内にB型肝炎ウイルスが残っている特定無症候性持続感染者の場合、以下の検査費用も国から支給されます。
- 慢性肝炎等の発症を確認するための定期検査費
- 母子感染防止のための医療費
- 世帯内感染防止のための医療費
- 定期検査手当
ただし、肝炎や肝がんなどの発症日や、感染者の死亡日から20年経過すると、B型肝炎給付金が大幅に下がるので注意してください。
B型肝炎訴訟を弁護士に相談・依頼するメリット
B型肝炎給付金は請求方法が訴訟になっており、国と和解できなければ受け取れません。
訴訟手続きは難易度が高く、時間と労力もかかるので、弁護士への依頼が現実的といえるでしょう。
弁護士に相談・依頼すると以下のメリットがあるため、B型肝炎給付金をもらえる確率が高くなります。
証拠収集や訴状作成を任せられる
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼すると、証拠収集や訴状作成に対応してくれます。
訴訟の際には、集団予防接種が感染原因であることを証明しなければならないため、母子健康手帳や医療記録、医師の意見書などを提出します。
しかし、感染時期が古い方は証拠が集まりにくく、体調を崩していらっしゃる方は自分で動けないケースもあるでしょう。
医療機関によっては意見書を作成してくれない場合もあるので、B型肝炎訴訟の準備が進まないときは、弁護士に証拠収集や訴状作成を依頼してください。
弁護士がB型肝炎訴訟に関わると、医療機関の理解を得やすくなるため、訴訟の準備が早く整います。
訴訟手続きの代理人になってもらえる
弁護士には訴訟手続きの代理人を依頼できるので、多忙な方や、肝炎などで療養中の方でもB型肝炎訴訟を起こせます。
B型肝炎訴訟は一般的な民事訴訟と同じ流れですが、まず裁判所が訴状を受理してくれるかどうかが最初のハードルになります。
訴訟の準備段階から弁護士に関わってもらうと、書類の準備が万全になるため、訴状はほぼ確実に受理してもらえるでしょう。
また、弁護士が対応すると証人の協力も得やすくなります。
裁判所への出廷も代行してもらえる
B型肝炎訴訟が始まると、自分の意見や主張を述べる口頭弁論がおこなわれるため、2~3ヵ月に1回は裁判所に出廷する必要があります。
口頭弁論の期日は裁判所が指定するので、出廷が難しいときは弁護士に代行を依頼してください。
弁護士が口頭弁論に対応すると、集団予防接種などが原因のB型肝炎であることや、証拠の確実性を論理的に主張してくれるので、訴訟の終結も早くなるでしょう。
給付金に訴訟手当金4%が加算される
B型肝炎訴訟で国との和解に成功すると、給付金の4%が訴訟手当金として支給されます。
民事裁判で訴額が3,600万円の場合、弁護士費用は317万円~673万円程度かかりますが、B型肝炎訴訟では144万円が支給されるため、自己負担はかなり軽くなります。
また、B型肝炎訴訟は着手金無料の弁護士が多く、報酬金は給付金を受け取った後に支払うので、まとまった資金がなくても訴訟を起こせるでしょう。
さいごに|B型肝炎で陽性なら弁護士に相談を
B型肝炎の検査費用には助成金制度があり、集団予防接種などが感染原因であれば、B型肝炎給付金も請求できます。
ただし、B型肝炎訴訟によって給付金を請求するときは、母子健康手帳や医療記録などを集め、集団予防接種が原因であることを証明しなければなりません。
また、B型肝炎訴訟は和解までに1年以上かかるケースがあるので、自分1人だけでは出廷に対応できない可能性があります。
B型肝炎訴訟を起こすときは入念な準備が欠かせないため、弁護士に検査結果をチェックしてもらうとよいでしょう。
体調がすぐれない方や、仕事や家事が忙しい方は、訴訟手続きも弁護士に任せてください。